2012年5月 7日
タモの一枚板を「なぐり」という加工で仕上げた私たち「マルトク」の商品です。
「なぐり」とは、木の表面をチョウナやツキノミなどで加工する技法です。
転じて、凹凸をつけた仕上げ面を「なぐり加工」と呼んだりもします。
「なぐり」の加工で使われるチョウナは、樹皮や木材の表面をはつる荒削道具で、最近ではこの道具を使う大工さんもめっきり見かけなくなりました。
製材道具の少なかった昔、木材の平面を作りだすときは、表面をチョウナで大まかにハツり、ヤリガンナで整えるという工程がとられていました。
つまり、製材における下処理の段階が「なぐり」です。
昔から茶室の床柱や数寄屋建築によく使われていた「なぐり」ですが、現代では、無垢材を豊かに彩るデザインとして、室内の様々な場所で使われるようになっています。
「なぐり」は、主に栗の木に施されていた技法ですが、最近では、多種多様な木材に取り入れられています。
また、チョウナを使った手作業ではなく、機械で仕上げたりすることも可能です。
私たちマルトクでは、無垢材に新たな表情を加える「なぐり加工」も承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。
2012年4月18日
私の地元には、「高松ファイブアローズ」というbjリーグに所属しているプロバスケットボールチームがあります。
私も子供と一緒に何回か試合を観戦に行きました。実業団チームの試合では味わえない華やかな演出と外国人プレイヤーの迫力あるプレイに圧倒されます。
今年のファイブアローズは、現在最下位を独走中ですが、何とか巻き返してほしいものです。
そんな高松ファイブアローズのメインアリーナとなっているのが、高松市総合体育館。
四国最大級のアリーナを持ち、スポーツのみならず各種コンサートやイベントにも活用されています。
高松総合体育館のアリーナの床面には「サクラ」が使用されています。
「サクラ」を床面に使用した体育館は非常に珍しく、昭和61年に開館した当初は、「サクラの体育館」という売りだったことを記憶しています。
サクラには色々な種類がありますが、用材として一番適しているのはヤマザクラと呼ばれるものです。
サクラと言えば、私たちが真っ先に連想するソメイヨシノは、江戸時代に観賞用として作られた木で、
用材には向きません。
ヤマザクラの材質は、硬くて粘りがあり、切削加工が容易なうえに表面が綺麗に仕上がる性質があり、
家具、漆器の木地、楽器類など幅広く使用されています。
また、ヤマザクラの樹皮は、秋田県角館の伝統的な木工工芸品である樺細工(かばざいく)に利用されています。写真の茶筒は、樺細工の伝統技法を活かして、プロダクトデザイナーの山田佳一朗さんがデザインしたものです。
樺細工という名前なのに、樺の木は使われていないなんて不思議な話ですね。
現在、ヤマザクラは入手が非常に困難なため、良く似た材質のカバ材が代用品として供給されています。
2012年3月30日
前回のブログで、日本の「能」で使用されている能面にはヒノキが使用されていることをお話ししました。
「能」の世界におけるヒノキの使用は、お面だけではありません。
「能」の舞台は、能舞台(のうぶたい)といって、ここにもヒノキが使われています。
本物の能舞台は、木曽で産出される尾州檜(びしゅうひのき)の柾目の長材だけで作られます。
尾州檜とは、木曾谷に生育する樹齢300年以上の天然の檜の名称で、非常に貴重な木材と言えるでしょう。
江戸時代、ヒノキを使用しての舞台制作が許されていたのは、「能楽」「歌舞伎」などの
幕府に認められた劇場だけでしたが、現在では、国立劇場や歌舞伎座という格式の高い劇場の舞台も
尾州檜で造られています。
格式の高い劇場の舞台にしか使われないヒノキ。
転じて、「檜舞台」という表現は、自分の手腕を人々に見せる晴れの場所という意味で使われています。
天然ヒノキ自体は、福島県以南の本州と四国および九州と広範に分布していますが、群生地となると、
木曽谷以外にはほとんどありません。多くのヒノキは植林によって人工的に育てられたものです。
水湿腐蝕に強く非常に耐久性に優れているため、風呂用具から仏像彫刻と幅広く使用されているヒノキは、
「良い木材」の代名詞とも言えます。
神社やお寺の柱などにも使われている一方で、ヒノキは別名「火の木」とも呼ばれ、
家の柱にはヒノキを使わずに、大壁柱には杉を、床柱には槐(えんじゅ)を使うと、
火除けとなって家に火を呼ばないとの言い伝えがあったりもしますから面白いですね。
2012年1月29日
日本の伝統芸能である「能」で使われる能面にも木が使われています。
能面は、主にヒノキで製作されています。ヒノキは、柔らかくて軽く、ゆがみや縮みなどが少ない優良木材で、日本最古の木造建築「法隆寺」にも使われています。
250~260種類くらいあると言われている能面ですが、基本的なものは60種類くらいで、そのほとんどが室町時代の末期に完成されています。桃太郎侍でおなじみの「般若(はんにゃ)」や「小面(こおもて)」などは、印象深い面だと思います。
能面が世界中にある仮面の中でも特に優れている点は、役柄をただ単に明示するだけではなく、面の動かし方でさまざまな感情を表情できるように精巧な工夫がなされているところです。
この面の動かす動作は、「テラス」「クモラス」「ツカウ」「キル」「シオル」などと呼ばれています。
少しうつむくこと(クモラス)で面全体のかげりが多くなり、憂いをおびた表情になります。これによって、とまどいや恥ずかしさを表現します。さらにこのままの状態で手を目に当てれば(シオル)、泣いている様子を表現できます。
逆に少し上を見上げる感じであおむける(テラス)と、明るい表情へと一変します。この状態で扇を胸の前で大きく動かすと大いなる喜びの表現となるわけです。
数ある能面の中でも、木材が持つ特性が偶然活かされたものに「節木増(ふしきぞう)」という女性の面があります。
「節木増」は、制作したときに節のある檜が使われたのですが、しばらくすると、ちょうど鼻の左側にあたる節からヤニが出てきて、人間で言うところの「しみ」のようになりました。
普通なら、そのヤニを除去して塗り直すところですが、作風があまりにも素晴らしい面だったため、そのまま手を加えることなく、「節木増」という一つの型として残るほどになったのです。
今でもこの面を制作する際は、わざわざ元の面と同じところに節がくるように面取りをしたり、「しみ」を書き加えたりしています。
2012年1月15日
多種多様な木材は、用途に応じてある程度使用するものが決まってきます。重いものが適している、あるいは堅いものが適しているなど、どのような木材を使用するかの選定基準は千差万別です。
楽器類も例外ではありません。特にヴァイオリンなどのように歴史のある楽器は、「表板にはスプルース」「側板にはメイプル」といった具合に、パーツごとに使用される木材が細かく決められています。
エレキギターのボディにも木材が使用されていますが、ヴァイオリンなどに比べると実に多くの木材が選定されています。メイプル、アッシュ、アルダー、バスウッド、コリーナウッドetc... 数え上げたらキリがありません。
何故エレキギターには多様な木材が使用されるのでしょうか。楽器としての歴史が浅いからなのか、それともアコースティック系の楽器と比べると音に与える影響が少ないからなのでしょうか。
エレキギターのボディに使用される木材で重要な要素となっているのが、木の模様、いわゆる木目です。ギターのボディやネックの木目には外見的な美しさが重要なので、こだわる人も多いと思います。
木目は別名「木理」とも呼ばれ、木材の表面に現れた年輪や組織の状態や細胞の並び方のことです。
また、材面に現れた木理のうち、繊維の並び方が乱れて特徴的な模様を持つものを杢(もく)と呼びます。杢は、あくまでも外観的な特徴であるため、ギターの音色に重大な影響があるわけではありません。
杢は、その模様に応じて「網杢」「泡杢」など様々な名称で呼ばれます。我々が「虎杢」と呼ぶ杢をエレキギターの世界では、タイガー・ストライプ、「玉杢」をバーズアイなどと表記されます。ところ変われば呼び名も変わるみたいですね。