2011年5月31日
チークの原産地は、乾期と雨期の区別がはっきりしているモンスーン地帯・インド、ミャンマー、タイ、ラオスなどに天然に分布しています。
また、銘木の価値を求めて、世界の熱帯地域のジャワ、スマトラ、ニューギニアから南米まで、各地で人口造林されています。
伐採する時には、根本に近いところで樹皮を環状に切り取って剥がし、3年ほど放置しておく「巻き枯らし」という方法がとられます。これは、生木のチークが水に沈んでしまうほど重い「沈木」であり、そのままでは運ぶことが困難なために行われます。
その昔インドやビルマが植民地だった頃、チークを大量に伐採して英国海軍の軍艦造りに使われてきました。帆船カティサーク号や豪華客船クイーン・エリザベス2世号のブリッジなどが有名です。チークには良質の油、木製タールが含まれていて、これが鉄の腐食を防ぎ、釘やボルトなどを錆びにくくさせます。木肌に触れると滑らかで柔らかい感触があり、機械油に似た匂いがするのはそのためです。
木自体も酸化、腐食しにくく、酸や塩、水にも強く、シロアリやフナクイ虫にも侵されにくく、加工も容易です。
↑貴重なチークの耳付板。鮮やかな金褐色。
金褐色の材面に黒っぽい縞が出てくるため装飾的な価値が高いので、マホガニー、ウォールナットと並んで「世界の三大銘木」と呼ばれています。チークの最大の魅力は、歴史的にみても、その力強さと長く使っていても飽きの来ない落ち着いた質感でしょう。
飾り棚や銘木的な使い方もありますが、直接触れてみることのできるフローリングなどに大胆にたっぷりと使って、質感を楽しんでもらいたいところです。
2011年5月18日
「米杉(ベイスギ)」と呼ばれる木があります。名前からも分かる通り、アメリカから輸入された木です。日本には明治17年頃から輸入され最盛期には数十万立方メートルにもなり、日本でも馴染み深い木の1つですが、最近この木に大きな問題が降りかかっています。
昨年末頃から徐々に値段が高騰して、3~4年前に比べて2倍以上の値段がついています。しかも値段が高くなっても原木の手当てが容易ではない。理由は幾つかあるのですが、1つは欧州や豪州市場からの引き合いが強いという事。特に欧州市場では違法伐採撲滅機運が強くジャラやイペなど熱帯産のエクステリア材から米杉への移行がみられます。そのため急激に欧州、豪州市場からの買いが入ってきています。
また米杉は高さ30~60m、直径4mにも達する巨木で、北米を代表する重要樹種
の1つでもあります。主要な生育地であるカナダ西部のブリティッシュコロンビア州(BC州)は、世界でも有数の大森林地帯で、その森林面積は6000万haと日本の国土面積の1.5倍に
も達っしています。(ちなみにそのうちの3500万haは保護地であったり、採算が合わないという理由でほぼ永久に伐採されず自然のまま放置されている)壮大な森林資源であるが、伐採対象となっているのは最低で200~300年生以上の高齢木で1度伐採してしまうと簡単に次の世代に交替という訳にはいきません。もちろん伐採後には人工的に苗木が植林され、持続的な森林経営が出来るような努力が行われています。にもかかわらず最も分布の多いBC州でも伐採量は年々減少傾向にあり、特に厚物のクリア(化粧用の上小節~無節クラス)盤が取れる大径木の良質材が少なくなってきています。また産地側も、米杉が腐りにくかったり水にも強いという特徴を持っていることから、競争力の高い市場へ出荷するため国際的な競争にさらされ、価格が一層高等している面もあります。
昨年末からBC州沿岸産地では労使交渉のこじれから3カ月にも及ぶ長期ストも繰り広げられ、山から米杉が出てこないという状態が続き、ますます米杉の値段が釣り上がりました。いくら競争力のある木といえども、市場では適応相場というものがあり、あまりに高値が続き供給量が絞られてくると、別の代替材を探す方向に力が働き米杉そのものが市場から姿を消してしまう可能性もあります。かつてのラワンのように。そうならない為にもすみやかに需給のバランスがつりあうことを願うばかりです。
ここで改めて米杉の特徴を振り返ってみます。まずその名前からしてまぎらわしいのだが、日本に輸入された時に杉に似ていることから、大正時代の中頃からこの名がつけられました。米杉の本名はウエスタンレッドシーダーといって、北米西海岸特産のヒノキ産ネズコ属の常緑針葉樹です。この仲間は北米や北アジアに6種ほどあり、日本の代表がネズコです。だから本来は「アメリカネズコ」と呼ぶのが正しいのですが、今やすっかり米杉の名前が定着してしまい、杉の仲間ではないと言うと驚く人の方が多くなりました。ネズコという木を知っていれば、ああなる程と思えるくらい米杉とネズコはよく似ています。独特の芳香は木材に含まれるヒノキチオールなどの含有成分のためで、腐りにくく水にもよく耐えます。そのため現地では屋根材(シングルやシェーク)、外壁材、また船舶やカヌー、ボート、ログハウスなどにも使われています。
木の枝葉や樹皮にはビタミンCが多く含まれ、壊血病をそのエキスで治癒することが出来たことから、当時のフランス国王はこの木を「アーバーバイティ」と命名させたといわれています。ラテン語で「生命の木」の意味があります。アメリカ先住民の精神文化の象徴ともいえるトーテムポールも米杉で作られていて、先住民たちにとっては文字通り「生命の木」です。ちなみに花言葉は「変わらない友情」。材は軽軟で加工も容易です。柾目挽きすると目合いが整然と並び美しさが際立つ。洋風な建物のポーチ柱や化粧梁などに使うと、全体が引き締まってシャープに見えます。
また乾燥も容易で収縮率も低く、反りやねじれなどが出ることも少なく、さらに軽量で扱いやすいのも嬉しい。主に取り扱っているのは、1×4、2×4、4×4などのディメンション材と外装材と別注挽きです。前述したような理由で現在米杉の材価が不安定で大量在庫が出来ず、とりあえず1×4(16×89mm)の2、3、4mをストックしています。貴重な米杉専門工場で製材した商品で、品質管理は徹底していて、仕上がり具合いも良好で評判もいい。フェンスや店舗などで意匠的に使われることも多いです。時が経ちロマンスグレーに染まった米杉の壁版に、日本のワビやサビのような感傷を抱くのは私だけではないはず。「世界でもっとも美しい木」とも呼ばれるウエスタンレッドシーダー、こういう状況になって慌てて騒ぎだしその価値が見直されるのは皮肉な話ではありますが、これは契機に改めて「世界でもっとも美しい木」の魅力を再認識していただきたいところです。
2011年5月 9日
木は、おもに針葉樹と広葉樹に分類されます。
スギやヒノキなどの針葉樹は温帯から寒帯に、サクラやキリなどの広葉樹は世界中に分布しています。
針葉樹は540種が存在するのに対して、広葉樹は20万種もあると言われています。
圧倒的に広葉樹が多いわけですが、樹木全体の量からすると広葉樹は針葉樹の2倍程度となります。
これは、針葉樹は多量に群生するのに対して、広葉樹は樹種ごとの数量が少ないのと、広葉樹の種類の中には蔓植物などもカウントされているためです。
一般的な針葉樹は単位面積当たりの成長量が多いため、人工林に植えられます。
日本では、スギやヒノキなどの人工林が全森林面積の40%を占めています。
針葉樹は幹がまっすぐなものが多いのに対して、広葉樹は枝分かれが多く、主幹と枝との区別もつきにくいものが多いのが特徴です。
針葉樹からは柱を、広葉樹からは一枚板(ムク)を取ることが多いのはそれぞれの樹形の違いからです。
木材の一般的な特徴としては、針葉樹は柔らかくて軽いものが多く、広葉樹は硬くて重いものが多くなります。
2011年4月25日
原油価格の高騰、中国の住宅の旺盛な需要など様々な要因から、輸入材の品不足が続いています。特に輸入合板は品薄感から、製品の奪い合いが起きるほどひっ迫していますが、輸入合板の問題だけではありません。北洋材の羽柄材(オウシュウアカマツの野縁(4.0m38×38mmなど)や北欧材のフローリング、中国産のフローリング(特にメープルなどの白物)さらに米松の構造材など現地の事情や低利益体質から、品不足、値上げ交渉が本格化しています。今まで安価で供給安定性に優れた輸入材に頼りきった外在依存型の傾向が続いてきました。そのなかにおいて、国産材の立場は「こだわり」というキーワードで語られてしまうほど希少性がありました。しかしここにきて単なる差別化という意味合いだけでなく、積極的に国産材を使おうという動きが活発になってます。
その理由は、日本国内の資源を有効に活用するという環境面へのPRだけでなく、国産材でもしっかりした乾燥技術が可能になった事。また超大型工場による安定供給、さらにFSCの森林認証など、他との優位性が目に見える形で確立されたことによるものです。そこで今回は「これからの杉の可能性」について、具体的にどういう商品を扱うのかを紹介してみたいと思います。
日本中どこにでも植林されている杉。柱などの構造材としては頼りになる存在ですが、、床材や家具材としては柔らかく傷つきやすいという理由で敬遠されてきました。最近は杉に熱圧処理を施して圧縮させ堅くさせた圧密木材も開発されていますが、個人的には本来杉の持つあたたかみを殺してしまっているように感じます。柔らかい素材は、それ故にあたたかいのだという事を理解し、それなりの使い方(または使い方の工夫)をすればいいのではないかと思っています。
杉の素材感を生かし、なるべく余計な手を加えない商品として、福岡県八女(やめ)地方の「八女杉の特大フローリング」(4.0m220×30)があります。抜節は、節の赤芯でしっかり埋木しています。足場板並のサイズはワイルド。しかしこれだけの幅広となるとわずかな歪みでも影響が大きいです。そのため人口乾燥ですが、仕入後さらに梱包をバラし、1段毎浅積みて天然乾燥させています。また1枚板のこのサイズとしては安価で思い切って大胆に使えるものも魅力。豪快なこの床板を前にすると、キズの事などささやかな事に思えます。
家具も床と同様にキズがつきやすい事から心配されてきましたが、大型の本棚などの収納物に使う場合、値段が手頃なため枚数が使えます。杉だけだと素朴なだけに田舎風で単調になるのではと思う方には、他樹種を取り入れることである程度解消できるとおもいます。
2011年4月25日
昔から日本人は、生活のなかに木を上手に取り入れてきました。
奈良にある法隆寺は、世界最古の木造建築物ですし、私たちの身の回りにあるタンスやちゃぶ台、食べ物を口に運ぶお箸でさえも木で作られています。
日本は、長い年月をかけて「木の文化」を育んできたわけです。
ところがそんな木の国で育った私たちですが、木に関しては意外に知らないことばかりです。
木には多くの種類があります。
マツ、スギ、ヒノキ、カエデと数え上げればキリがありません。(キリも木ですね。)
人間同様、それぞれの木が色々な特徴を持っています。
硬い木、柔らかい木、重い木、軽い木、まっすぐな木、曲がりくねった木などなど...。
先人たちは、その中から目的にあった木材を選び、いろんなものを作ってきました。
私たちが日曜大工で作品を作るうえでも、使用目的にあった木材を見極めることが肝心です。
ものづくりにおいて、たくさんある素材(木材)の中から最良のものを選択することが難しくもあり、楽しみでもあるのではないでしょうか。