2022年1月27日
常日頃お客様にお届けしている様々な木材が、どのように加工されているかご存知の方はあまり多く無いと思います。丸太が一枚の板になるまでには、意外なほど長い時間をかけてたくさんの人と機械を介して加工されて行きます。もくもく通信では、木材が旅する工程を支える、木材加工のマシンについてご紹介したいと思います。
【関連更新】
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木材加工の機械 大量生産に対応するマシン6つ
目次
【終わりに】マルトクショップ では工場見学も受入れております
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前回までの二回の更新で、木材加工に必要な機械の内、基本的なものはほとんどご紹介しました。それでも全ての機械をご紹介できた訳ではありませんが、前回までにご紹介した機械があれば、基本的な加工をする木材加工工場が経営できるかもしれません。今回の更新では全三回の更新の締めくくりとして、BtoB向けを中心とした大量生産や、より高度な加工に対応するための大型マシンをご紹介します。
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マルトクショップ →有り
ワイドサンダーは様々なサンダー(研磨用機械)の中では一番大型の機械。木材をローラーに乗せて流すと、全自動で板の両面を研磨することができます。マルトクショップ においては表面を出荷できる状態にまで仕上げるというよりは、プレーナー等を通した後の木材の表面を仕上げ前に大まかに整えたり、厚みを微調整するのが主な仕事です。
ワイドサンダーの仕事1:プレーナー後の逆目を取る
特に広葉樹の無垢材の場合、プレーナーで厚みを整えた際に写真のような逆目が出ます。この逆目は仕上げ用の番手の細かいペーパーサンダーでは取ることが出来ないので、仕上げ研磨に入る前にワイドサンダーで取り除きます。
また、加工途中についた傷を研磨して取り除く際にもワイドサンダーを使用します。ワイドサンダーを通した後の木材はオシュレーションという独特の跡がつくので、最終の仕上げ工程で跡を取り除き、やっと表面がお客様の手元に届くクオリティに仕上がります。
ワイドサンダーの仕事2:木材の厚みを微調整する
また、ワイドサンダーは木材の厚みを微調整するのも大きな仕事です。木材の厚みの調整はプレーナーでも行いますが、1〜1.5mmの厚みを一気に削るプレーナーに対し、ワイドサンダーは0.2mm程度の厚みを繊細に削ることができます。正寸カット後の木材を仕上げ工程に回す前に、仕上げ研摩の分も計算しながらワイドサンダーで厚みを調整し、木材をオーダー通りのサイズに仕上げて行きます。
マルトクショップ →有り
一般的にはあまり聞きなれない機械、モルダー。マルトクショップ の工場では主にBtoB向けの製品生産に使用している大型マシンです。
モルダーは一言で言うと一度に複数の面の直角出し(板の角を直角にして歪みのない直方体に仕上げる作業)ができる機械。通常無垢の原盤から板材を切り出す際には、サイズにもよりますが手押しカンナや直角二面で基準となる面の直角を出し、プレーナーでねじれを取って残りの面の直角を出すのが一般的です。対してモルダーは、機械の設定をして木材を流すと、木材のねじれを削ることで厚さのムラを無くし、木口を除く4面すべての直角を出すまでの加工を一気に行うことができます。
そんな素晴らしい機械であれば、全ての木材をこのモルダーで加工すれば他の機械はいらないのではないか?と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし複雑な加工ができると言うことはその分複雑な設定が必要になると言うことでもあります。マルトクショップ のように1枚からオーダーカットをしている工場では、1枚の木材の加工にモルダーを動かすことはかえって効率が悪い場合もあるので、個人様向けのオーダーではモルダーの出番はほとんどありません。個人様向けではなく、企業様からの発注で同じ規格の木材を大量にカットするような場合にはこのモルダーが大活躍しています。
モルダーは刃物の枚数が多いほど、複雑な加工が可能です。シンプルな四軸制御であれば、装飾のない四面直角の木材を加工できます。刃物が一枚増えた五軸制御(マルトクの工場にあるのはこのタイプです。)であれば、四面直角+一面の装飾(面取り)が加工できます。同じく六軸制御であれば、二面の装飾面が加工できます。
マルトクショップ →無し
エッジバンダーは化粧板の木端・木口の処理のために使われる機械です。芯材と面材を複数貼り合わせて製造する製造するフラッシュ合板や、メラミン化粧板などの合板の断面に、専用のテープを貼って本物の木材のように美しく仕上げます。この木口の処理は手作業でも可能ではありますが、商業ベースで大量に生産するのであればエッジバンダーが必ず必要になります。
マルトクショップ では現在フラッシュ合板の製造・取り扱いを行っていないのでエッジバンダーはありませんが、フラッシュ合板やフラッシュ家具の製造を行っている多くの工場で活躍しています。
マルトクショップ →有り
マルトクショップ の工場で毎日活躍しているNCルーター。とても簡潔に説明すると、プログラム制御でオート加工きるルーター盤です。特殊な形の木材を切り出したり、複雑なカットをする際に使用されます。「NC」とは「Numbers Control」の略で、CAD等で描画したデータをコード変換し、データ通りの形に木材のカットや穴あけを行います。
NCルーターは三軸制御と五軸制御があり、三軸制御の場合はX(横)・Y(縦)・Z(深さ)のみを指定して加工できるので、板材を好きな形にくり抜いてカットしたり、丸以外の穴を開けることができます。五軸制御の場合は、三軸制御の動きに加えて刃物を斜めに動かすことができるので、球形など曲線的な立体を切り出すことが可能です。具体的には木製の椅子などで、お尻の形にフィットするよう丸みをつけてある座面などは、職人の手作業を除いては五軸制御のNCルーターを使って製作されています。
マルトクショップ の工場でもこの五軸制御のNCルーターを導入しており、お客様からの複雑な指定のオーダーや、家具製造等で活躍しています。
マルトクショップ →有り
ルーターマシンだけでなく、ボーリングマシンにもプログラム制御できるNCボーリングマシンが存在します。穿孔に特化しているNCボーリングマシンは操作がシンプルで、ワンショット数秒で複数の穴を正確にあけることができるのが特徴です。
マルトクショップ の工場にあるNCボーリングマシンはワンショットで最大6つの穴を開けることが出来ます。ビットも同時に複数使えるので一度の加工で大きさの異なる穴を複数開けることも可能です。また、他の機械では加工が難しい木端や木口の加工もできるので、家具などの複雑な部材の穴あけに活躍します。特にマルトクのオリジナルブランド「m3PRODUCT」の製造においては、このNCボーリングマシンの加工が欠かせません。
また、NCボーリングマシンがあれば家具製作工法のひとつである「System32」に沿った加工が可能です。System32は32mmを単位として、その倍数で加工を行うドイツ発の工法で、特にヨーロッパでは主流となっている手法です。System32のために開発された金物の種類も多く、規格に則して加工を行うことでそれらの金物も使用可能となるため、家具製作においてメリットが大きくなります。
全三回に分けて木材加工の機械設備についてご紹介しました。一口に木材加工工場と言っても製造販売している商品によっても、活躍する機械のラインナップは変わってきます。マルトクショップ の加工工場では無垢材・集成材の加工に特化したマシンを活用して日々お客様へお届けする商品を製作しています。
木材や機械にご興味のある企業様・個人様は、マルトクショップ の工場を実際にご見学いただくことも可能です。実際に加工する木材を見たり、対面で加工のご相談を受けながらご注文いただくこともできますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。(新型コロナウィルスの情勢次第では見学受入れを一時的に中止する場合もございますので、必ず事前にお問い合わせください。)