2019年12月19日
マルトクショップが販売している「木材」。木材を使うことにどんなイメージを持っていますか?
体にやさしい?自然にやさしい?それとも木を伐採することで環境を破壊している?
どんなことも、見る角度によって解釈は変わってきます。今回からのもくもく通信では、木材と環境、そして人に及ぼす影響について更新していきたいと思います。
目次
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昔から日本人は、生活のなかに木を上手に取り入れてきました。奈良にある法隆寺は、世界最古の木造建築物ですし、私たちの身の回りにあるタンスやちゃぶ台、食べ物を口に運ぶお箸でさえも木で作られています。
林野庁のHPによると、この地球上の森林率(陸の面積に対する森林の比率)はおよそ30.6%(※1)だそう。それに対し、私たちの住む日本の森林率は67%(※2)と、およそ倍以上の森林率を誇っています。この数字は先進国と呼ばれる諸国の中ではフィンランド、スウェーデンに次いで高く、実は日本は世界的な森林大国なのです。
ところがそんな木の国で育った私たちですが、木に関しては意外に知らないことばかりです。
木材を使用することは環境にとってどういった意味を持つのか、材木屋の視点でお伝えしたいと思います。
木材を加工し積極的に使用することで、大気中のCO2を削減し温暖化を防ぐことに繋がる。そう聞くと違和感を覚える人は多いのではないでしょうか。
地球温暖化の要因の一つとして、森林の伐採による環境破壊を挙げる研究者は多いです。もちろん、違法な木の伐採、無計画な森林破壊は地球における大きな問題であり、看過できることではありません。土地の面積における森林の割合を森林率と言いますが、地球上の森林は1990年から2015年の25年間で約1%減少(※3)したと言われています。森林が失われる理由としては、
・輸出用作物の畑を作るための森林伐採(主に新興国)
・人災的による大規模な山火事(アマゾンやオーストラリア
・パルプの需要
等があり、世界的に見ても問題となっています。
日本の一般的な家庭で一年あたりに排出される二酸化炭素量はおよそ4480kgとされています。これは面積で言えば約0.51ヘクタール、509本の杉の木が一年間に吸収する二酸化炭素と同じ量だそうです。(※4)
現在の日本の森林面積は約2505万ヘクタール(※2)、世帯数は約5340万世帯(※5)と言われていますから、面積だけの単純計算でも一世帯あたりの森林面積は約0.47ヘクタールと、実は足りていないのです。
面積だけの計算なので詳細に証明された数字ではありませんが(参考程度にご覧ください)、家庭以外にも日本国内には様々な企業や工場があり、あらゆる経済活動の場でも二酸化炭素は排出され続けていることを考えると、私たちの思っている以上に温暖化問題と言うのは深刻であると言うことだけは読み取れます。
有数の森林保有国である日本でもこの調子ですから、地球温暖化は全ての先進国にとって、とても大きな問題です。
その一方で、木材はきちんと計画的に、適切な量を伐採して使用すれば、CO2問題の改善に貢献することができるのはあまり知られていない話です。
植物は空気中のCO2を取り込み、その炭素を栄養分として成長します。一般的な草本植物(数年内に枯れてしまうような草花)は枯れると微生物に分解され、そのCO2は自然の循環の中で地中や空気中に還元されてゆきますが、樹木は数十年、数百年もの間枯れずにCO2を取り込み続けます。
その樹木を伐採し、燃やさずに木材として使用するとCO2は空気中に還元されず、物質として固定されます。この固定されたCO2は木材の重量の50%とも言われ、木材を生産し、使用すればするほど、空気中のCO2を減らす効果があると言えます。これは「炭素貯蔵効果」とも呼ばれ、地球温暖化対策に有効です。(※6)
成長の早い樹木を計画的に植林し、木材やパルプの原料として使用する取り組みは世界の多くの地域で行われており、マルトクショップで取り扱っている木材で言えば、ユーカリやアカシアがこれに当たります。
日本の代表的な植林材と言えば杉と桧ですが、これら針葉樹も成長の早い木材です。これらの樹種に関わらず、マルトクショップで取り扱っている木材はほぼ全てがこうした計画的に生産された木材です。
木材は計画的に植林し、伐採し、また植林することで循環する素材です。木材を使用した後も、石油製品とは違ってまた分解されて自然に還ります。自然を壊さない、自然環境を守る素材として上手に使用していくことが大切です。
植林や森林保全への取り組み状況は国によっても異なりますが、中国やオーストラリア、アメリカ等の国では植林等の取り組みによって森林面積を増やしています。上記はマルトクショップで多く取り扱っているアメリカ広葉樹の成長量と伐採量のグラフです。成長量が伐採量を上回り続けているのが分かります。
木材を生産する、と言う行為は一本の樹木を切り倒すと言うことですから、一つの視点から見ればたしかに森林の削減かもしれません。しかし視点を変えてみると、計画的に育て・伐採し・利用し・また育てるというサイクルを繰り返すことで地球環境の改善に貢献することができます。
日常にひとつ、木材製品を取り込んでみる。そしてそれを大切に使って行く。簡単ですが大切なことを、一人でも多くの人に意識してもらえれば、明日の地球環境に繋がってゆくとマルトクは考えています。
出典 |
※1 森林・林業分野の国際的取組(林野庁) ※2 都道府県別森林率・人工林率(林野庁) ※3 世界森林資源評価(FRA)2015(林野庁) ※4 森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?(林野庁) ※5 統計Today No.106(総務省統計局) ※6 地球温暖化防止に向けて(林野庁) |