2017年6月15日
自然塗料塗装材のメンテナンス法
自然塗料塗装材の汚れ落とし実験をしました。
実験用に無垢のビーチ材を用意し、左半分に自然塗料塗装を施し、右半分は無塗装のままで、食品や画材などの汚れをつけたものをきれいにする内容です。
材の左半分に自然塗料を塗装した材で汚れ等の実験を実施
実験対象材:左半分を自然塗料(クリアー)を塗装したビーチ材、右半分は無塗装の材を用意して実験をしました。
汚れ落としの実験
無垢材の半分だけ、自然塗料を塗装し、無塗装面での汚れの落ち具合いも比較観察できるようにしました。
今回、汚れの素材に選んだの以下の通りです。手垢は、水拭きと希釈した中性洗剤で落とせるのであえて検証は行いませんでした。
汚れのジャンル | 汚れの素材 |
食品汚れ | コーヒー、しょうゆ、ケチャップ、中華調味料(豆板醤) |
画材汚れ | 水彩絵の具、色鉛筆、墨、油性ペン |
【実験概要】
実験要領:いずれも、汚れを付着させてから1時間後に汚れを拭きとり、希釈した中性洗剤(注参照)を布に含ませて払拭する。
実験用具用材:中性洗剤(水で希釈したものを用意)、メリヤス生地、ティッシュ
実験は、マルトク工場内にて6月上旬から中旬にかけて常温で行いました。
実験 汚れを落とす |
(試験材の左半分を自然塗料塗装を施しています。)
[食品汚れ]
コーヒー
写真左:コーヒーをこぼして1時間放置。写真中:無塗装面にかなり拡がったコーヒー跡を、水拭き後希釈した中性洗剤で汚れを払拭した状態。自然塗料塗装を施した材の左側は、かなり汚れがとれましたが、無塗装部分は、染みが残りました。
しょうゆ
写真左から:しょうゆは、拭き始めは跡が残りますが水拭きした後に希釈中性洗剤で拭くと徐々に跡が分からなくなりました。
ケチャップ
写真左:ケチャップを対象材の上にこぼす。写真中:1時間すると無塗装面で目立って水分が拡がった。写真左:希釈した中性洗剤で払拭するとほぼきれいになった。よく見ると無塗装面側では、うっすら色素が残った。
豆板醤(とうばんじゃん:中華料理調味料、油と唐辛子等配合)
写真左:中華料理の調味料「豆板醤」をこぼし1時間放置。写真中:汚れをすくい取った。油分は1時間程度ではほとんど染込み確認はできませんでした。唐辛子の色素沈着は若干残りました。写真右:希釈した中性洗剤を含ませた布でふき取った。洗剤だけで汚れが落ちない場合は、サンドペーパーでの研磨が必要です。
[画材汚れ]
水彩絵の具、色鉛筆
写真左:上から水彩絵の具(ビリジアン色)、色鉛筆(赤色)で汚し、1時間放置。写真中:水拭き後、希釈した中性洗剤で拭きとる。左半分の自然塗料塗装部分は水彩絵の具がまず最初に落ち、更に払拭すると色鉛筆も消え始めた。当初より目立たなくなった。(写真右)
墨
写真左:墨で材を汚す。写真中:水拭き後、中性洗剤で固く絞った布地で拭く。写真右:拡がった汚れをティッシュ等で拭き取りながら希釈洗剤でふき取る。無塗装部分は、墨の色素が沈着した。
墨は、昔から表札などで使用されており定着の良い成分です。今回も実験で無塗装部分の墨汚れが、ほぼ残りました。しかし自然塗料塗装が施された左半分は、墨の成分は材に吸収されず希釈中性洗剤でかなり落とせました。
実験では、円を描くように払拭したので、無塗装部分では汚れが拡がってしまいました。余分な水分や汚れは随時ティッシュペーパーなどで除去しながら拭くといいでしょう。最終的に、拡がった墨汚れ部はそれなりに汚れが落とせました。
墨汚れの除去のコツは、汚れた部分のみ集中的に払拭し、汚れていない部分に拡げない事がコツのようです。
油性ペン
写真左:油性ペン跡は、材左半分の自然塗料塗装部分は、中性洗剤で1分程拭くと写真右のように若干薄くなります。続けるとインク跡は薄くなりますが同時に塗装面の塗装色も若干薄くなります(写真右)。
油性ペンのインク跡の除去には限界があります
力を入れるよりも、汚れが付着していない布面で汚れを布地に移す気持ちで拭き取ります。余分な水分はティッシュなどで随時拭き取りながら、汚れが拡がらないようにします。
跡が消えない場合は、塗装面ごと削るサンドペーパーでの研磨が必要です。
自然塗装の場合は、 水、中性洗剤で固く絞った布地で拭きます。完全には消すことが出来ませんがかなり薄くなります。油性ペン跡はインクの浸透性も高く中性洗剤では汚れ落ちに限界がありました。
禁じ手の溶剤を使ってみました。※材が傷むのでご使用しないで下さい。
実験なので、禁じられているベンジン、アルコールを用いた実験も行いました。無塗装の材を用いて、油性ペン跡の汚れを除去できるか試してみました。(あくまでも、これらの溶剤を用いても木地を痛めるだけで汚れが除去できない事をお伝えするためにあえて実験しました)
ベンジンやアルコールでも油性ペン跡は消えない
写真左:ベンジンで油性ペンを用いて無塗装材に直接落書きをしたを拭いてみましたが、瞬時に揮発し溶解もせずほとんど変化しませんでした。(無塗装材にて実験)写真右:アルコール(無水エタノール)を吹きつけると、滲みはしたものの消すことは出来ませんでした。(無塗装材にて実験)
以上 実験終わり
手垢汚れ
手垢が目立つようなら、希釈した中性洗剤で堅く絞った布で払拭してください。拭いた後は、乾拭きして水気が残らないようにしましょう。くれぐれも、ベンジンやエタノール(アルコールもしくは、エタノール配合のウエットティッシュ等)の使用は避けてください。
自然塗料塗装材のメンテナンスまとめ
自然塗料の塗装を施した材のメンテナンスの容易さも素晴らしいものでした。
ただし、自然塗料の効用を維持するためには定期的に専用ワックスや自然塗料の塗布が必要ですが、そういった手間を惜しまない方には、お勧めの塗装方法です。
今回、汚れを除去する実験のなかで水だけで落とせないものか試してみましたが、材の片面だけに水分が吸収され若干ですがソリが発生しました。汚れを除去する際は、汚れをすくい取れる場合は下敷き様のものですくい取り軽く水拭きした後、希釈した中性洗剤で汚れを落とすのが最も効率が良かったです。
自然塗料塗装面の汚れを払拭すると、その強度によって若干塗装が薄くなる場合があります。汚れの度合いよっては、サンドペーパーがけをして自然塗料塗装をしたほうが良い場合もあります。ご使用の度合いによってご判断下さい。
メンテナンス用、自然塗料専用ワックス
汚れを落とし、ツヤを出すメンテナンス用のワックスも各塗料メーカーから販売されています。通常の木部のお手入れは水拭きで充分ですが、汚れが目立ってきた際、お試し下さい。塗装面の汚れを落とし、自然な艶を引き出します。
自然塗料を塗装しておけば、メンテナンスが容易です。(写真は、半分だけ自然塗料クリアーを塗装した実験検証後の無垢材です。自然塗料を塗装していない部分のみ汚れが残っている。)
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無塗装について
無塗装材は、一旦汚れや染みが発生すると、払拭だけでは取れなくなります。染みの除去はサンドペーパーがけが必要です。そういった状態を避けるため、材の保護。末長く木肌の味わいを楽しむために自然塗料(クリアー)がお勧めです。
現在、無塗装でご使用の方はこの機会に自然塗料塗装をご検討されてみてはいかがでしょう。DIYでできます。