2024年12月30日
自然で温かみのある、”優しい素材”として取り扱われることが多い無垢材・集成材。自然の恵みである木材は確かに化学物質を含有しない100%自然な素材ですが、内装材として使用できる状態にまで加工された木材の安全基準はどうなっているのでしょうか?今回の更新では、一般的にはあまり知られていない、木材の安全基準についてご紹介します。
目次
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木目の美しいオークは北米からやって来ます
私たち株式会社マルトクが主に取り扱っているのは世界各国で大切に育てられた無垢材と、それを原料として作られる各種集成材。インテリアにおいて木材はその美しさだけでなく、「自然、ナチュラルな素材」「優しいもの」「安心・安全」という印象を持って多くの人が採用する素材だと思いますが、その優しさや安全性はどういった基準で守られているものなのでしょうか。安全のあり方は切り口によっても様々ですが、マルトクショップで大切にしている「木材の安全性」についてご紹介したいと思います。
きちんと管理された植樹針葉樹林
まずは素材としての木材を考えたときにその安全性はどうなのかと言うと、もちろん自然毒と言われる毒物を含んでいる樹木は存在します。有名なところではその樹液でかぶれてしまう漆(うるし)や、庭木としてごくごくポピュラーな紫陽花や一部のツツジの仲間にも毒性のある種類があるそうです。が、内装用の木材として一般的に入手可能な木材に関してはそうした毒性のあるものはほぼ無いと言っても良いでしょう。そもそも触れたり舐めたりすることで人体に悪影響を及ぼすような木材が内装材として広く使われると言うのは考えにくい話でもあります。
マルトク工場内のウレタン塗装の様子
木材自体の毒性はまず無いと言う前提のもとで、結局は木材の安全性とは加工に使用される薬剤の安全性と言うことになります。では地面に「生えている」木材がどのような道を辿って私たちの手元に届くのかと言うと、まずは木材を伐採、スライスして乾燥します。乾燥することで初めて、生きている「樹木」が「木材」として使用できる状態になります。
1、伐採 2、選別・皮剥き 3、挽き割り(乾燥前にスライスする) 4、乾燥 |
ここまでの工程で出来上がるのが、「挽き板」と呼ばれる製材前の原板です。マルトクショップでは現在丸太の買い付けはしておらず、この挽き板になった状態の木材を仕入れて、お客様の希望の形まで加工するのが主な仕事になります(無垢材の場合)。この挽き板を作る過程では刃物以外に薬剤等を使用する場面はほとんどありません。木材を人工乾燥にかけるような場合には割れ防止剤の処理をする場合もありますが、その後の工程で切ったり削り落とされる部分なのでエンドユーザーに影響は無いと言えます。
ビスケットジョイントの様子
その後挽き板となった木材は、マルトクをはじめ全国の加工所に運ばれて様々な木材製品となって行くこととなります。木材の用途は様々ですが、マルトクショップにおいては下記のような行程で加工を行なっています。
5、挽き板のサイズ調整(歪みを取り、厚さを整える) 6、幅ハギ(幅100mm程度の板を横に並べて接着することで幅広の板に加工する) 7、正寸カット 8、仕上げ(塗装) |
かなり大まかに分けてもここまでの行程を経て(詳細な加工工程は下記記事参照)、ようやく木材はお客様の元へ旅立っていくこととなります。木材の加工の過程で接着剤や塗料などの薬剤を使用するのはこの幅ハギと、必要に応じて行う塗装の工程です。逆にここ以外では薬剤らしい薬剤はほとんど使用されていませんが、この接着剤と塗料にどんな成分の物を使用するかによって、木材の安全性は大きく変わって行きます。
塗装に使用する塗料も「薬剤」
木材や内装建材に使用される薬剤には様々な成分が使用されていますが、その成分放散速度基準ごとにF☆〜☆☆☆☆と言う表示がなされることとなっています。この F☆〜☆☆☆☆のマークは2003年に行われた建築基準法の改定と同時にJISの認証、JASの認定を受けた製品の安全等級。主にシックハウス症候群の対策のために取り入れられている規格です。国内外のJIS規格工場で生産される、JIS製品に表示が義務づけられています。
※JIS(日本工業規格)・・・日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格
※JAS(日本農林規格)・・・農林物資(飲食料品、農産物、林産物、畜産物、水産物など)の品質や表示に関する基準を定めた全国統一の規格
F☆☆☆☆:使用面積の制限なし F☆☆☆ :使用面積の制限有り F☆☆ :使用面積の制限有り マーク表示なし:使用禁止 |
Fはホルムアルデヒドを示しており、成分が一時間あたりどの程度空気中に放散されるかが基準となっています。(→詳細な基準)ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の主な原因とされる成分で、合板の防腐剤として安価であることから広く使われて来ましたが、2003年にその使用量に明確な基準が設けられ、日本国内においてハウスメーカーは建築確認申請に基準を満たす建材を用いている旨を記載する必要があります。
星の数は4つが最多となっており、F☆☆☆☆(エフフォースター)を取得している建築材料に関しては人体に悪影響を及ぼす可能性が非常に低く、建築に使用する面積に制限は無いとされています。日本国内で言えば多くのハウスメーカーではこのF☆☆☆☆を取得している建築材料のみを使用している会社も多いですが、F☆☆☆☆に満たない基準の建築材料もまだまだ流通しています。もし、新築やリフォーム等をお考えであればきちんとF☆☆☆☆を取得した建築材料のみを使用しているのか、確認してみるのも大切です。
自然塗装で主に使用しているオスモカラー
マルトク工場内で木材の加工に使用する薬剤や資材はそんなに多くありませんが、複数種類存在します。お客様に大きく影響するところで言えば木材の幅ハギや家具制作に使用する接着剤。節やひび割れの補修に使用するパテ、オプションで行うウレタン塗装と自然塗装それぞれの塗料がメインで使用する可能性のある薬剤になります。
マルトクの工場内で加工している無垢材に関しては、すべてこのF☆☆☆☆以上の製品しか使用していないので、健康面については安心してお使いいただけます。
→自然塗装の製品に関しては、主にオスモカラーを使用しています
アカシア集成材のテーブル
加工の工程がシンプルで分かりやすい無垢材に対して、一般的にその加工方法が想像しにくいのが集成材では無いでしょうか。集成材とは、250〜350mm幅の木材を接着して一枚の板にした木材。合板等と違い厚み方向には貼り合わせないので「ほぼ」本物の木であることには間違い無いのですが、小さなピースを繋ぎ合わせるために接着剤が使用されています。
→集成材の製造方法
そのため集成材にもホルムアルデヒドの含有基準の表記は義務付けられており、マルトクでは材料として入荷する集成材、提携工場で加工する集成材どちらにおいてもすべてF☆☆☆☆以上の製品を使用しています。
オーダーに応じて集成材同士の接着や塗装をする場合には、無垢材と同じ安全性の高い製品を使用しているので、安心してお使いいただければ幸いです。
普段使っている家具や内装木材の成分とその安全性については、もしかしたら考えたことがない方も多いかもしれません。でも実はこうした内装材の安全性は主に生活する場である自宅、その室内の空気を左右する非常に大切な要素です。また、木材はお手入れをしながら正しく使えば何十年、何百年と使える究極のエコ素材。SDGs的な観点で見ても使い続けることでCO2排出量を少なく抑えられる、やっぱり地球や私たちに「優しい素材」です。
見せかけのナチュラルさだけでなく、本当に身体に優しい空間づくりを。使っている資材の内容にも、ぜひ興味を持ってみてください。