2023年1月26日
家具をDIYする際には、多くの場合何らかの金物や壁、他の木材などへ「取り付ける・組み合わせる」作業が必要です。一番手軽なところで言えば接着剤やビスによる接合が一般的なところではありますが、実はそれ以外にも簡単で強度に優れた方法が有ります。今回の更新では、ちょっと一手間は必要ですが仕上がりの美しさがワンランク上がる、「ダボ継ぎ・ビスケットジョイント」をご紹介します。
目次
仕上がりにこだわるなら!「ダボ継ぎ」「ビスケットジョイント」とは
– 木ダボ – ビスケット
– 木ダボの接着方法
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木材の接合に使う、「木ダボ」「ビスケット」をご存知でしょうか。DIYにおいて木材を接合する際に一番手軽に使用できるのは釘とビスですが、木材の面と面を組み合わせるような場面ではこの木ダボとビスケットが大活躍します。木ダボを用いた「ダボ継ぎ」、ビスケットを用いた「ビスケットジョイント」それぞれどんな用途に適しているのか、そのメリットと使い方をご紹介します。
左:ビスケット 右:ダボ
木ダボとビスケットはそれぞれ形の違う木製のチップです。木材の接着時に木地に穴を開け、埋め込むことで接着の強度を上げることが出来ます。木ダボは通常数mm程度の直径をした円筒状で、ビスケットはお菓子のビスケットのように平たい楕円形のような形をしています。
向かい合う木材の触れ合う部分に穴を開け、これらのチップをボンドと共に埋め込むことで縦横の荷重にも強くなり、接着剤のみで接着するよりも強度を上げることが出来ます。そしてこの2つに共通する最大のメリットは、「どこから見ても金具や加工跡が見えないこと」。完全に埋め込んでしまうため、作品の美的メリットが大変大きいのがダボとビスケットの大きな特徴になります。
また、ダボもビスケットも非常に単価が安いので、使い方によっては金物を使用するよりもコストを抑えることができるというコストパフォーマンスの良さが魅力です。
ダボとビスケットで木材を組み合わせるには、木材の「向かい合う同じ位置に穴を開ける」ことが必要です。これがなかなか最初はコツが必要で、なかなか初心者向きの技術と言いにくい部分です。そしてビスケットの場合にはこの穴あけにも専用の機材が必要です。(ダボの場合はインパクトドライバー)
また、ダボ継ぎやビスケットジョイントは接着剤が乾くまでの間、なんらかの形で荷重をかけてしっかりと圧着させる必要があります。箱のように単純に上に重石を載せることで荷重をかける事ができる形状であれば、そんなに難しくはないのですが、重石を載せることの出来ない形状の場合はクランプでの締め上げが必要です。
木ダボは直径数mm程度の円筒状の木製チップです。木材に埋め込むという使用法はビスケットと同じですが、木ダボの大きな利点はインパクトドライバー1本で加工できることです。また、小さな面積に打ち込む事ができるので、比較的面積の小さい接合には木ダボの方が便利な場合が多いでしょう。
また、木ダボは木材の接合の他にも、インパクトドライバーで開けた穴を埋めたり、作品のポイントとして装飾的に使うこともできます。
インパクトドライバーで手軽に加工できるダボ継ぎですが、径が小さい分向かい合う素材同士の対応する位置に穴を開けるのは多少のコツと技術が必要です。加工前の墨付けにはさしがねやマーキングポンチといった工具が活躍する他、一定の間隔で複数穴を開ける場合には治具を手作りする方も居ます。ご自分に合ったやり方でぜひ挑戦してみてくださいね。
マルトクショップ ではあまり自信がない、加工スペースがあまり無いけれどダボ継ぎで家具を作りたい!という方向けに、ダボ穴加工も承っておりますのでぜひご利用ください。
マルトクのビスケットジョイント加工風景
ビスケットはお菓子のビスケットのような薄い木片で、多くはブナの圧縮材で作られています。DIYはもちろんのこと、マルトクショップ のような工場における木材の「幅ハギ」にも使用されます。ダボと比較したビスケットの特徴をはっきり言うと、「速く正確、強度もダボより強い」、でも「初期投資が必要」です。
特に大きなものを作る場合、横幅のあるビスケットの方がダボよりも少ない数で木材を接着することができます。また、一般的には強度もビスケットの方が強いので、椅子や重い物を入れる棚などはビスケットジョイントの方が安定感があります。
ただ、ビスケットには専用の穴を開けるための道具が必要です。ジョイントカッターと言う専用の機械を使えばきっちりと精度を出した穴を開けてくれるので、DIYの場合は墨をつけて手で穴を開けるダボ継ぎよりはるかに速く正確な穴を開ける事ができます。王道ではありませんが、トリマーでもビスケット専用のルータービットが販売されているようです。
マルトクショップ では、「ビスケット穴加工」「ダボ穴加工」を承っております。お客様のオーダー通りの場所に専用の穴を開けて、サイズに合わせたビスケット、もしくはダボを同封して木材をお送りします。自前での穴開けが不安な方、お手持ちの機材がない方はぜひご活用ください。ダボ穴・ビスケット穴のオーダーは木材注文時に備考欄にご記載いただき、図面を添付いただく事でご注文いただけます。
穴を開ける位置については、確実な位置の分かる図面をお送りください。
他の穴開け加工と異なり、ダボやビスケット用の加工を行う際には必ず2つの木材が対になるように穴を開けるので、全体図のわかる図面に位置を数字で指定した図面をお送りください。
図面を書くというのは慣れなければ難しく感じるものですが、取り付け位置の分かる面から見た図と、数字での位置指定があれば手書きでも構いません。(もちろんプロのお客様はCADデータ大歓迎です。)難しい場合はマルトクショップ での図面作成も承っておりますのでご相談ください(有料)。また、取り付け位置や個数に迷いがある場合は、お気軽にご相談いただければプロの目線でご返答させていただきます。
加工位置に関しては、必ず穴の中心位置をご指定ください。特にダボ穴の場合、円形の穴の両端の位置で位置をご指定いただくことはできません。ビスケットに関しても、ビスケットのサイズは複数あり木材の厚みや大きさを考慮してサイズを選択するので、中心位置のみをご指定ください。
ダボ穴加工・ビスケット加工は自動注文フォームではご指定いただけませんので、備考欄にて加工の要望をお知らせいただき、「カートに入れる」ボタンをクリックしてください。そのさきのカート確認画面にて図面を添付いただけます。注文時点で加工料金は加算されませんが、オペレーターが図面を確認し、加工料金を加味したお見積りを改めてご返信いたします。
マルトクショップ にてダボ穴加工・ビスケット穴加工をご依頼いただきますと、それぞれ専用の穴が開いた木材と、穴に対応したサイズと数のダボもしくはビスケットが届きます。ここから木材を接着するのはお客様のDIYでの作業となりますので、手順を簡単にご紹介します。
ダボの場合は写真のように丸い穴が複数開いた木材が届きます。ご自分の設計図をよく確認し、相手となる材料を見つけて揃えておきましょう。
木材のチェックが終わったら、ダボ穴に接着剤を流し込みます。たっぷり入れてしまうとダボを差し込んだ際に盛大に溢れるので加減して入れましょう。接着剤は一般的な木工用ボンドがお勧めです。
接着剤を入れたら、穴に添付されて来たダボを差し込みます。溢れた接着剤が多く、表面に溢れ出そうな場合伸ばしたり拭き取ったりして調整しておきましょう。
面と断面をLやTの字にダボ継ぎする場合は、ダボを差し込む(いわゆる雄側になる)部分は面側の方が次の工程がスムーズかもしれません。が、作品の形にもよるので自分なりに工夫してみてください。
最後に相手側(雌側になる)部材の穴にもボンドを流し込み、接着面にも薄く接着剤を塗り、二つの木材を合わせます。加工に問題が無ければ対応する穴にダボが収まるはずです。
隙間なく面が密着するように、グッと押し込みます。この際接着剤がはみ出ている部分がある場合は濡れた布で拭き取っておきます。接着剤が乾く前に、クランプや重石でしっかりと荷重をかけ、歪みなく木材が接着するようにします。
ビスケットジョイントの場合も、ダボ継ぎと工程はほとんど変わりません。ビスケットの場合は写真のように長細い溝の空いた木材が届きます。接着する相手材をよく確認したら、雄側にする部材の穴に接着剤を流し込みます。
接着剤を入れた穴にビスケットを差し込みます。大概の場合溢れるので、溢れた量が多い場合はビスケット本体に塗ったり、少し取り除いたりして調整します。
ビスケットを差し込んだら、手早く受け側の接着面とビスケット穴にも接着剤を薄く塗ります。塗りすぎるとはみ出る量が多くなるので注意が必要です。
後の工程はダボの場合と同じです。接着剤が乾く前に、素早くクランプまたは重石で木材が動かないようにしっかりと固定します。はみ出た接着剤がある場合は乾く前に濡れた布で拭き取り、しっかりと乾燥させて完了です。
マルトク工場での圧着の様子
ダボの場合もクランプの場合も、いずれも接着剤が乾く前に素早くクランプで木材が動かないように締め上げます。この固定の工程は、箱型のように上に何かを載せられる形で接着する場合は重石でも代用できます。平面での幅はぎや、上に重石を載せるのが難しいような形状の場合は接着剤が乾くまで1日程度しっかり固定しましょう。
ダボ・ビスケットの強度は?
木材の表面に穴やパーツを見せることなく接着できるダボとビスケットは、完成度を求めるDIYには心強い存在。実際にマルトクショップ で行なっている無垢板の幅はぎにはビスケットジョイントを使用することもあり、実際にその場合板として使用するための強度は充分です。 ただ、ビスケットもダボもあくまで木製パーツなので極度に荷重がかかるような部位へ使用すると強度が不十分な場合があります。天板だけでも重量がある上に人が寄りかかったりする、テーブルの脚部分の取り付けなど「細いパーツで重量物を支える、垂直以外の力がかかる」ような用途には必ず金物を使用しましょう。 重量物を入れる場合でも、箱型で上下に垂直に荷重がかかるような場合はビスケットジョイントやダボの得意分野です。 |
ダボ継ぎで仕上げた箱型ベンチ(お客様作品)
今回の更新では、木材の接合に使う「ダボ」「ビスケット」についてご紹介しました。マルトクでもオーダーできるこれらの加工ですが、届いてから手元での接着が必要なため初心者の皆さんには手を出しにくい加工となっているかもしれません。でも一度マスターしてしまえば、家具の見える場所に無粋な金物をつける必要が無く、非常にデザイン性に優れた仕上がりが可能です。
ワンランク上の完成度を求める方はぜひ挑戦してみてくださいね。