2020年8月21日
無垢材・集成材を使っているなかで、「傷つけてしまった」「汚れが気になってきた」なんてこともあると思います。そうした使い込んだ風合いを「味」として大切にする方も多いのですが、せっかく愛着を持って使っている家具ですからなるべく美しい状態で使いたいという方も多いはず。そこで今回のもくもく通信では、購入したあとの木材のちょっとしたメンテナンスについてご紹介します。
目次
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お気に入りの木材は、ベストな状態で使いたいもの
購入後の木材のお手入れ方法としてお客様からよくお問い合わせいただく内容を大きく分類すると、
「ソリが出て来たので直したい」
「汚れ、シミが気になってきた」
「傷をつけてしまったので補修したい」
「表面の手触りが悪くなった(ざらつきが出て来た)」
などが多いように思います。(返品の対象になるような初期不良は除く。)
こうしたトラブルには使って行くなかでどうしても発生してしまうもの。いつまでも新品同様で使い続けることはどんな素材でも難しいですが、程度の軽いものであれば自宅でメンテナンスすることも可能です。
油分やコップの跡など、特にテーブルは汚れがち
特にテーブルやカウンターなど、接触面に無垢材を使っている場合は絶対に避けられないのが汚れやシミ。だんだんと黒ずんで来たり、コップの跡がまるく残る「輪ジミ」、染み込んだ油分など、特に無塗装材やオイル塗装の木材では気になりやすいです。
結論から言うと、これらはどんなに気をつけていても少しずつ蓄積して行ってしまいます。普段のお手入れは基本的に乾拭きもしくは固く絞った水拭きが基本ですが、定期的なメンテナンスは欠かせません。
塗装別の相性
◯→無塗装・自然塗料
△→ウレタン塗装(対応している商品も有)
まずは汚れが大量に蓄積する前に、クリーナーワックスでこまめにお手入れすることをお勧めします。リボス自然健康塗料、オスモカラーなど各塗料メーカーでメンテナンスワックスの取り扱いがあるので、好みに合ったものを一つ持っておくと安心です。物によってはウレタン塗装面に使えるものもあります。
塗装別の相性
◯→無塗装・自然塗料
×→ウレタン塗装
ワックスでなかなか汚れが落ちなくなって来た、完璧に汚れを落として綺麗にしたい場合はサンディングをして再塗装するのがお勧めです。少し手間はかかりますが、まるで新品のように綺麗になりますよ。自然塗料塗装や無塗装の場合はウレタン塗装材よりも汚れやすいですが、再塗装ができるのが大きな強みです。
ただし、再塗装が難しいウレタン塗装ではこの方法は使えません。
→下地を整える方法:木材の塗装前のサンディング
→自然塗装の実施方法:自然塗装の再塗装
塗装別の相性
◯→ウレタン塗装
×→無塗装・自然塗料(サンディング・再塗装が必要)
ペンのインクが付いてしまった、油を落としてしまったなどのピンポイントの汚れで、
「全体をサンディングして再塗装するのはちょっと…。」
と言う場合は、一度中性洗剤等で汚れが落ちるか試してみても良いかもしれません。(台所洗剤など、必ず中性洗剤と表記のあるものを選んでください)
木材は水を与えると毛羽立つ場合があるので、その場合は乾燥後にそこだけペーパーサンダーでささくれを取って塗料を塗り込んでおくと良いでしょう。
◆確実に汚れを落とすならサンディングがマスト
塗装別の相性
◯→無塗装・自然塗料
×→ウレタン塗装
範囲が手の平よりも大きい場合は、最初からサンディングして汚れを削り落とすのも有りです。どちらにしてもペーパーサンダーを使うと一時的に他の場所と色が変わってしまう場合が有ります。少し気になるかもしれませんが、日が経つと落ち着いて馴染んで来ます。
→塗装した木材の普段のお手入れ
もくもく通信「木材の反りの発生実験」より
購入後の木材が反ってしまった、というのは実は時々いただくお問い合わせです。無垢材を使う中で反りを無視することはできず、いかに反りを防ぐか、施工や使用方法を検討して行くことが欠かせません。どのような仕組みで反りが起こるのかは、もくもく通信の中でもご紹介して来ました。
→木材の反りはなぜ起こる
→反りの発生実験
木材の反りの発生状況は使用環境によっても大きく異なります。まずどのような使用方法で反りが起こりやすいのか、実際の事例をご紹介したいと思います。
無垢材の水分バランスが狂うことで反りが発生します。日常の生活の中で特に注意したいのはエアコンの風。ダイニングテーブルをエアコンの真下に設置している、なんてお宅も多いかと思いますが、意外と木材にとっては過酷な環境だったりします。
レイアウト的に避けられない場合は反りどめの使用や反りを防ぐための設計の工夫が必要です。
無垢板をご購入されたお客様で意外と多いのが、「今ある家具の上に置いて使う」というパターン。手軽に無垢材を楽しめる反面、固定せずに使用するとだんだんと反りが出てくる可能性があります。
どうしても固定したくない場合、おそらく想像よりもかなり厚く、重さのあるサイズでないと反りは防げません。樹種やサイズによっては反りどめも必要です。
前述のように、反りの原因は木材の水分バランスの偏りです。水に濡れたまま放置したり、あまりにも頻繁な水拭きは反りの原因になり得ます。
水をこぼしたらすぐに拭く、水拭きの際は乾拭きもしくはしっかりと固く絞った布巾で行うことが大切です。
◆反ってしまった木材はどうしたら良いの?
マルトク工場内での反りの修正工程
反ってしまった木材のメンテナンスは時間もかかりますし、状態によっては難しい場合もあります。木材の反りは設計時点での対策も非常に大切です。具体的な対策としては、事前に反りどめの取り付けや幅方向になんらかの固定をする設計にして反りを防ぐ方法が一般的です。
実際に反ってしまった木材に関しては、まずは反った面を裏返し、重力の力を借りながら水分バランスを調整することで修正できる場合があります。詳しい方法は下記のページをご参照ください。
→ 木材の反りの修正
濃い色の木材は特に傷が目立ちやすい
傷をつけてしまったから補修したいと言うお問い合わせも、比較的多くいただきます。尖ったものを当ててしまった、圧迫してしまったなど原因は様々ですが、日常の中で起こりやすいダメージのひとつです。あまり酷いものになってくるとご家庭では補修が難しい場合が多いのですが、ごく軽い傷であればDIYで補修することもできます。
塗装別の相性
◯→無塗装・自然塗料・ウレタン塗装
尖ったものや服についていた金物など、ちょっとしたものでついてしまう引っかき傷。意外とよくあるトラブルです。
本当に些細な傷であれば上から自然塗料を塗り込んでしまえば目立たなくなることも多いですが、それでは効果がない場合は補修用のクレヨンが便利です。複数のメーカーからキズ補修用のクレヨンが販売されているので、木材に合った色を選べば綺麗に傷を隠してくれます。
根本的に傷を消したい場合は汚れと同じくサンディングをすることになります。一手間かかりますが、やればその他の汚れ等も落ちて綺麗になります。
全面を塗り直すのは難しい場合は、部分的にサンディングすることもできます。色が馴染むまではそこだけ色が変わってしまいますが、年月と共に落ち着いて来ます。
→下地を整える方法:木材の塗装前のサンディング
→自然塗装の実施方法:自然塗装の再塗装
木材に硬いものを押し付けてしまった時に、圧迫による跡がついてしまうことが有ります。特に柔らかい木材や、糸面などの小さな面取りをした部分に起こりやすいです。大きくへこんでしまったり、木の繊維が傷ついてしまっている場合は完全に補修するのは難しいのですが、木材が無塗装で、軽くへこんでしまっただけの場合はアイロンのスチームで目立たなくできる場合があります。
塗装別の相性
◯→無塗装
×→自然塗料・ウレタン塗装
◆アイロンを使った補修方法(平たい面)
1
木材を尖ったものや硬いもので圧迫すると、このような跡が残ることがあります。(写真はマホガニー材)繊維が傷ついてしまっていたり深い傷の補修は難しい場合もありますのでご注意ください。
まずは補修したい部分に水を垂らし、木材に吸水させます。
2
5分ほど吸水させたら、上からウエスやタオルなどの当て布をして、低温のアイロンでスチームをあてます。まずは一番低温で、変色等が無いか様子を見ながら蒸気を浸透させてください。
3
木材の繊維が膨らむと、このように傷が目立たなくなります。無塗装材に水分を与えると木肌が毛羽立つので、240番程度のサンドペーパーでスチームした部分を軽くサンディングすれば、なめらかに仕上がります。
【注意点】
※水分を与えると無塗装材は毛羽立ちます。必ずサンディングで仕上げてください。
※あくまで簡易的な補修方法なので、どんな傷でも綺麗になる訳ではありません。
◆角のへこみの補修方法
糸面やRの小さな面取りをした木材の場合、少しの圧迫で微妙なへこみやゆがみが出てしまう場合もあります。傷が付くような大きなへこみでなければ、意外と簡単に目立たなくできるので試す価値はあります。
塗装別の相性
◯→無塗装・自然塗料
×→ウレタン塗装
1
木材が無塗装材の場合は、アイロンスチームでへこんだ部分が膨らんでくるかどうか試してみてください。(方法は平面の場合と同じです)
状態によっては、これだけでへこみがかなり目立たなくなります。
塗装してある木材の場合はそのまま2へ。
2
スチームをかけた場合は乾燥してから、自然塗装の場合は塗装の上からそっとサンディングして形を整えます。平面の場合と違い、正面からサンディングすると面取り幅がどんどん広くなってしまうので、両サイドから慎重に削りましょう。サンドペーパーも、240番以上の細かいもので。
完璧に仕上げようと思うと削り過ぎてしまいます。目立たなくすることを目標に整えましょう。
3
だいたいへこみが目立たなくなったら修正完了です。自然塗装の木材の場合は、仕上げに塗料を塗っておきましょう。
無垢材のクリーニングやメンテナンスを本気でやろうとすると、避けて通れないサンディング。ポイントの汚れ落とし程度であれば手でも充分間に合いますが、テーブル一面などの広範囲になると電動サンダーが便利です。
ご家庭でのDIYであれば、アタッチメント切替でサンダーにもなるインパクトドライバーを一台持っておくと、マルチに使えて便利です。
いかがでしたでしょうか?
今回の更新では、木材を実際に使う中で経年変化と共に出てくるお困りごとを中心に取り上げました。次回は木材の特性上発生しがちなざらつきや小さなひびなどの解消法を中心に更新します!
次回更新は8/27の予定です。