2017年12月26日
樹種を選ぶ① 〜 どの木を選べばいい ~
色、特性、価格? それとも単純に好みで選ぶ?
樹種選びは、インテリアイメージや、用途などによって異なります。さらにコストも考えると、悩むことも多いと思います。今回より「樹種を選ぶ」に焦点を当てて、選び方を整理してお伝えします。
思い通りのイメージで樹種を選んでいただけるように、漠然としたイメージをお持ちの方でも安心して選べるように様々な角度で樹種選びのポイントを複数回にわたり紹介してゆきます。
無垢・集成材が醸し出す温かさや、確かな木材の魅力を一人でも多くの方にご堪能頂けるよう、安心して樹種が選べるよう、事例や集計データなども取り入れてお伝えしてゆきます。
色、木目、風合い、個性豊かな木材(マルトク:無垢材サンプル一例)
豊富な樹種。いったいどの樹種がいい?
初めに説明しておきますが、マルトクショップでは無垢材と集成材では、樹種の種類が異なります。お気に入りの樹種が決まっていれば、おのずと選択肢が限られますが、そうでない場合は、無垢材か集成材か決めてから樹種選択するのも方法です。
無垢材と集成材の違いは、もくもく通信バックナンバーで詳しくご紹介していますので、ご興味のある方は、もくもく通信を参考してください。
最初にイメージを持つと樹種選がスムーズです
漠然としたイメージをお持ちなら、インテリア雑誌や、インテリアショップなどで直に様々な樹種に触れ、好みを明確に知っておくことが大切です。樹種選びがスムーズです。(マルトクショップの樹種は、現時点で無垢材が30種ほど、集成材が10種類強ほどあります。)
どのような樹種が好きなのか、自分の好みを知っておくと樹種選定がスムーズです。
無垢材と集成材の違い
ざっくり表現すると見た目の違いが一番大きいです。無垢材は高級感があり木地の風合いを楽しむのに相応しいです。集成材はリーズナブルで無垢材ほどの風合いを求めない場合はとても使いやすい木材です。
ハギ方とハギ幅が違う
一番の違いは、ハギ方の違いです。無垢材も集成材も、材を接いで板材にして製造します。弊社の無垢材フリーカット商品は、幅90mm以上の材を幅方向にハギながら製造します。長さ方向は1枚も野のです。その為、木目や木肌の味わいが醸し出されます。一方、集成材は幅約30mm、長さ約30cm程度の材を幅方向に接着ハギを行い、長さ方向はフィンガージョイントで製造したものです。ハギ板を幅方向だけ接いで作る無垢材と、幅方向と縦方向に接いで作る差はありますが、どちらも100%木材で作られていますので、木の味わいは何れもご堪能できます。
タモ材の天板(左:無垢材、右:集成材、マルトクショップ施工事例より
無垢材のよさ、集成材のよさを活かす
家具などを作られる際に、デザイン的な指向や、仕上方法を含めて適材適所を考えて無垢・集成材の選定を行って下さい。
木目や木肌が均質な樹種であれば、集成材の特徴である細かなハギが目が目立ちにくくなるので、そういう特徴も含めて選ぶのもポイントです。
価格も併せて検討ください
木材の価格は、容積で計算しますので、小さな作品なら無垢材も集成材もそう大きな価格差はありません。大きな作品を作る際は、価格の差は大きくなります。その辺り、次号のもくもく通信でも検証します。
無垢材・集成材の違いについては「もくもく通信」をご覧ください。
無垢材がいいのか、集成材がいいのか、迷うところです。無垢材と集成材の違いは、もくもく通信バックナンバーで、詳しく紹介していますので、もくもく通信バックナンバーをご覧ください。
【もくもく通信 「ムクとシュウセイ」その1 無垢材と集成材のお話--無垢と集成の違い】
https://shop.woodworks-marutoku.com/mokumoku/2017/02/post-4.html
予算は、マルトクショップの自動見積りでご検討下さい
無垢材か集成材か迷われたら、いくつかの候補を決めておき、マルトクショップの購入ページで自動見積りしながら検討してください。自動見積りは、何度でも寸法や樹種を変えながら行えます。間違えて、注文ボタンを押してもすぐには、正式注文にはなりません(仮申し込みとなります)。安心して自動見積りをして下さい。樹種毎の価格も比較も容易です。(比較検討するなら「複数注文」のページが便利です)
樹種選びに際して
様々な選び方がありますので、一概に断定できませんが、例えばテーブルや机にご使用なら、キズの付きにくい堅い樹種をお薦めしておりますが、インテリアイメージや木目の好みもございますので、弊社サイトの「木材の性質および価格帯チャート」をご覧下さい。さらにインテリアの色調に合わせて、樹種の色を基準に選択するのが一般的です。
【木材の性質および価格帯チャート】
https://shop.woodworks-marutoku.com/chart/
インテリア空間の色味は、床、壁面、天井の順に色を淡くするのが基本です。例外も多くありますが、面で色を捉えるのは同じです。(インテリアの配色について更に調べるにはWebで「インテリアの配色」で検索すると参考になります。)
マルトクショップでの人気樹種は?
マルトクショップでは、売上げランキングを毎月更新しています。樹種人気が分かりますので参考にして下さい。
※マルトクショップTOPページの「売り上げランキング」引用(2017年12月18日時点)
毎月上旬に更新していますランキングは、前月の売上げによるものです。単純にどの樹種が多く売れたのかわかります。
用途別には、過去の事例を元に集計した用途別・人気樹種は、次回「もくもく通信」で紹介します。「テーブル・机」部門や「棚板」部門などの人気樹種を予定していまs。
次回は、「樹種選び」第二弾として、硬さ、価格、色、用途で樹種を選ぶを予定しています。
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2017年12月 7日
ソリ(反り)との付合い方 その3・・【ソリは、直せるのか?】
ソリは直せる?
無塗装材に水分を急激に(片面のみ)与えると「反る」事が明らかなので(前号)、逆に乾燥させれば戻るんじゃないかと考えがちですが、そこは天然木。一筋縄では行かないものです。木の持つ個性を理解して反りに対応しましょう。
反りの戻し方
少し反った天板なら、材の凹面を下にしてしばらく様子をみましょう。変化の兆しがなければ、凹面だけラップ等で覆い、しばらく様子を見ます。それでも戻らない場合は、凹面だけ軽く霧吹きで水分を与え数日様子を見てみましょう。(いずれも、気候や状況によって異なります。)
反りの具合にあわせて試してみましょう。(室内もしくは日陰で行う)
(1)経度な反りなら、裏向けてしばらく放置してみましょう。
(2)少し手ごわい反りなら、凹面にラップをかけて裏向けに置いてみましょう。
(3)反りがきつい場合は、凹面に水分を軽く与えてみます。
※何れも、サンギの上に反り材を置いて風通しよくして行って下さい。
写真左(ソリのある材)、中(ソリを戻す原理)、右(反った材の下にサンギを両端に置き、上から重みを加える)
木材の保管
木材業の反り対策
木材を熟知しているプロは、実に丁寧に木材を扱っています。入荷した木材はもとより、出荷ぎりぎりまで木材をベストな状態に保てるようにしています。
加工中の材も、工程が終わる毎にサンギを挟んで、風通しよくして次の工程を待つ(上の材は重し用)
ソリ止め対策
ソリの発生が気になるようであれば、木材購入の際に塗装、ソリ止め金具の取付け、または幕板を取付けるオーダー家具(下記で紹介)のサービスを利用する方法があります。用途や環境、デザインなどに応じて相応しいものを選択しましょう。
1)ウレタン塗装で材を安定させる
家具などを作る場合は、部材を組み合わせる事によって相互がソリ止めの働きをしていますが、天板を台の上に固定をせずに使用する場合は、使用状況によりますが、ウレタン塗装を施すと材の含水率が一定になりソリ対策となります。
ウレタン塗装
ウレタン樹脂の塗装で、マルトクショップでは、光沢のある通常タイプと、艶消し(ツヤ全消し)があります。何れもクリアー色です。
「両面塗装」「裏捨て塗り(ソリ止め予防の必要最小限)」等のオーダーができます。裏捨て塗りとは、目に触れない裏面への必要最小限の塗装内容です。ウレタン皮膜は、使用状況や経年により被膜強度が下がります。
ウレタン樹脂塗装被膜で木材の呼吸を抑え反りや汚れ予防。水濡れも安心。(通常タイプのツヤ有りとツヤ全消し、がある)
2)ソリ止め金具
前号でも紹介しました「ソリ止め金具」は、天板のサイズに応じて一点ずつ製作し取付けています。完全埋め込みタイプは木材の厚さ30mm以上に、通常タイプは木材の厚さ25mm以上に取り付け可能です。天板の厚みによって、取り付け可能なタイプに制限があるので、ご注意ください。詳しくは、マルトクショップにてお買い物ページ「ステップ2」の下の方に記載しています。完全埋込みタイプも通常タイプも効果は同じです。見た目の仕上がりが違うだけです。
ソリ止め金具
3)幕板
ダイニングテーブルや机等によく用いられている幕板は、ソリの軽減や脚の固定に対して機能しています。DIYで作られる際の木材ご注文の場合は図面(図面、手書きスケッチ・図面の写真画像、JWWのCADデータ等)があれば添付していただければ参考にさせていただきます。分からない場合はお問合せ下さい。
まとめ
2017年11月24日
【ソリとの付合い方 その2・・反りの発生実験】
容易に反りは、発生するのか?
反りは、表側と裏側の含水率の変動によって発生する
反りは、材の表面側と裏面側の含水率のバランスの崩れから起ると言われています。普段の生活環境では、極端な含水率の崩れはないので、反りの発生を容易に見る事は出来ません。
そこで、工場の一角で端材を用いて、どのように反りが発生するのか試みてみました。大それた実験ではありませんので、反りの発生するメカニズムを分かっていただければと思っています。
無垢材の片面に湿気を含ませて、反りを発生させる
同じサイズの無垢材を2枚用意し、それぞれ木表(下記、解説参照)と木裏に水分を与え旧水面側を裏にして日陰に放置し、反りの発生を観察しました。
実験に使用する材の大きさが、一般的な事務書類のA4サイズよりも狭い材なので、どの程度反りが発生するのか想定できません。厚みもやや厚手といわれる35mmあり、幅方向(※)が広めなので意外と反りが発生しやすいかも知れません。
※反りは幅方向に出やすい:一般的に、反りは薄く幅広の材に発生しやすいと言われています。
実験使用材:無垢材Black Cherry t35×300×190mm
実験時期2017年11月中旬 高松市郷東町
【解説】【木表(きおもて)】、【木裏(きうら)】とは、一本の樹木を製材する際、樹木の表面に近い方が木表といい、木裏とは、木の中心に近い方を木裏と呼ばれています。樹木の根からの吸水が樹皮近くを通ることから、木表側は、含水率が高いと言われています。反して、木裏側、つまり、樹木の中心側である木裏は含水率が低い傾向にあります。詳しくは、バックナンバーをご覧下さい。リペア4 ソリとの付合い方【ソリを科学する?】 https://shop.woodworks-marutoku.com/mokumoku/2017/11/2-1.html
【実験意図】
1.無塗装材は、含水率の変化が反りを発生させると言われているが、実際はどうか?
2.木表と、木裏では反りの度合いがことな異なると言われているが、実際はどうか?
【実験方法】
実験は、同サイズの無垢材2枚、目印に節のある方を「A」、節の無い方を「B」とし、Aは木表側に水分を与え、Bには木裏側に水分を与えました。このことで、木裏側と木表側での反りの差を確かめる。
1)A、Bの無垢材のそれぞれの面に直接道水を30秒かけました。
2)その後、1時間おきに都合3回、両方の無垢材に水を30秒間与えました。
実験は、日中はマルトクの工場裏空地と、夜間は工場内で11月中旬に3日間行いました。天候は、晴天の日に行いました。
(実験前)2枚重ねた様子。A,,Bの材の間には、隙間が無い。
------------------------------ 実験開始 ------------------------------
水分を与える(各材、片方の面のみ)
それぞれの無垢材に30秒間水道水をかけ、濡れたほうを下に向けて放置。
1時間後、2時間後、3時間後にそれぞれ30秒づつ同じ面に水をかけて、裏返しました。
水は、2回目より壁に立て掛けた状態でかけた。(裏面が濡れやすいので)
1時間後、僅かな反りを確認
1時間後、2枚を重ねるると、ごく僅か反りによる隙間が確認できました。
翌日、はっきりとした反りを確認
2日目、反り具合を見る為に、隙間が分かるようにAとB2枚合わすと2mmほどの隙間を確認できた。その後、1回だけそれぞれの片方の面に水道の放水により水分を与え、日陰に塗れた面を下にして日陰に置いた。夜間は、工場内にで写真の状態で保管した。
翌々日、明らかな反りを確認
3日目、反りによる隙間が4mm程になった。「反り」の発生は、隙間を見れば一目瞭然だ。
------------------------------実験終了------------------------------
反りのテストを終えて
木材に湿気を与えなくても、強い日射にさらすだけで、反りは容易に発生します。今回は湿気を与えて屋外に放置して試してみました。
天気の良い日に、適度な風のある状況下での実験は、とても分かりやすい結果がでました。
幅の狭い材を用いたので、分かりやすい反りがでるか心配でした。反りを喜ぶなんて、木材屋に身を置く者としてはご法度かも知れませんが、そこは実験という事でお許し願いたい。
反り予防には、ウレタン塗装や反り止め金具、幕板などの予防が安心
塗装は、必ず両面が基本です。幅広の天板なら反り止め金具(ご注文時に合わせて注文できます)をぜひお勧めします。もしくは、天板は、幕板を取付けるか、台座や、壁など可能な取付け場所に固定してできるだけ反りを抑える策を施して下さい。
今後、機会があれば「自然塗料塗装材 VS ウレタン塗装材 VS 無塗装材」、「広葉樹 VS 針葉樹」などの反り比較実験が出来ればと思っています。
2017年6月26日
ウレタン塗装材のメンテナンス
塗装被膜の存在も気づかないような自然な風合いのウレタン塗装(クリアーツヤ全消し)
ウレタン塗装材、日常の手入れは、固絞りの布で拭くだけ
使用環境や使用状況により大きく異なりますが、耐水、耐熱、耐傷、耐汚れに優れているウレタン塗装は、比較的柔らかい樹脂による塗膜を形成していますので、木材との密着性も高く塗膜の浮きやヒビが入りにくい塗装です。
自然塗料塗装に比べ、撥水性に富み汚れも付着しにくい特性があります。ウレタン塗装の樹脂塗膜は、自然塗料塗装のように塗り直しなしで使用できる期間が一般的に長いといわれています。
経年劣化やヒビ、やかんの直置きなど熱による塗膜面の変色が発生した場合は、塗膜を剥がし再塗装をするが必要になります。しかし深い傷やヒビ、熱いものに注意して使用していただければ安心して使える優れた塗装です。
汚れたときの掃除法
柔らかい布に希釈した中性洗剤を含ませ固く絞って払拭します。その後、ぬるま湯で固く絞った布で洗剤成分をふき取ります。最後に、乾拭きして水分を除きます。化学ぞうきんは、ウレタン塗装面に影響を与えますので使用しないでください。
ウレタン塗装は、溶剤や熱に注意
アルコール、ベンジン、シンナー等の使用は、絶対避けてください。ウレタン被膜を溶解します。熱にも影響を受けますので、熱いやかんや鍋、湯呑みなどの直置きは避けてください。
紫外線等にも樹脂膜が反応し日焼けしますので、ご注意下さい。
ウレタン塗装材に食品、画材汚れを施し1時間後に除去する実験。(手前は、中華調味料:豆板醤)
汚れ落としの実験
ウレタン塗装を施した無垢材の天板に、食品汚れと画材による汚れを除去する実験を行いました。
汚れのジャンル | 汚れの素材 |
食品汚れ | コーヒー、中華調味料(豆板醤) |
画材汚れ | 油性ペン、色鉛筆、墨、水彩絵の具 |
【実験概要】
実験要領:汚れを付着させてから1時後に拭きとり、希釈した中性洗剤を布に含ませて払拭する。
実験材:ウレタンクリア―塗装(ツヤ全消し)無垢板
実験用具用材:中性洗剤(水で希釈したものを用意)、メリヤス生地、ティッシュ、消しゴム、(注1)ベンジン、エタノール、ウレタンスポンジ
実験は、マルトク工場内にて6月上旬から中旬にかけて常温で行いました。
実験 ウレタン塗装材の汚れを落とす |
中性洗剤だけで、一部を除いて汚れの大半は落とせます
ウレタン塗装は、樹脂被膜で覆われているので希釈した中性洗剤で拭きとると油性ペンの汚れ以外は落とせます。
写真左:ウレタン塗装した無垢材を汚した。写真右:希釈した中性洗剤で汚れの半分(赤点線内)を払拭した。
汚れをティッシュで取り除き、希釈した中性洗剤で数回拭きとると油性ペン以外の汚れは、かなり落ちた。
引き続き払拭すると油性ペン以外の汚れはほとんど落ちた。
コーヒー
写真左:コーヒーをこぼし1時間後にティッシュで拭き取り、水拭きすると元通りになった(写真右)
油性ペン
希釈した中性洗剤での汚れ落としには限界があります。数分間払拭した時点でも油性ペン跡が残ります。
油性ペンの汚れは、手ごわい
油性ペンの汚れも、しばらく拭き続けると徐々に跡が薄くなりますが、完全に除去できないので他の方法を探りました。
写真右:ウレタン塗装面の油性ペン跡。写真右:希釈した中性洗剤で拭き取るも簡単には消えません。消しゴムをかけても変化なし。
条件付き、禁じ手の除去法
ウレタン塗装は、溶剤に弱い
ウレタン塗装は、樹脂成分の塗装です。ベンジンやアルコール(エタノール)などの溶剤は化学変化の起因となりますので、絶対に使用しないでください。
今回は、実験という事もあり、あえてこれら溶剤を用いてみました。(お願い:真似はしないでください)
写真左上:ベンジンを用いても結果に変化はありません。写真中:アルコール(エタノール)でもほとんど変化なし。写真右:希釈した中性洗剤を含ませたウレタンスポンジで軽く擦ってみるとあっさり消えました。(実際には細かな傷がつきます)
使い込んだツヤ全消しのウレタン塗装材ならば禁じ手も?
どうしても油性ペンの汚れが落ちず気にななるようなら、条件付きですが、前述で使用を控えるように書いたウレタンスポンジを使う方法もあります。
条件は、年季の入ったウレタンツヤ全消し塗装であれば、希釈した中性洗剤を含ませた「ウレタンスポンジ(上写真右)」で、軽くこするとあっけなく油性ペンの汚れが落とせます。
ただし、目視では、よく分かりませんがウレタン塗装面に細かい傷が入ります。(光沢のあるウレタン塗装材には使用しない事)。ウレタンツヤ全消し塗装であっても、無傷の材には使用しないでください。塗膜が曇るばかりか、かえってその部分だけが目立ちます。
以上 実験終わり
まとめ
ウレタン塗装のメンテナンスは、基本水拭きだけ
表面が被膜で覆われているウレタン塗装は、水拭きだけで日常のメンテナンスは完了します。
しつこい汚れには、希釈した中性洗剤で払拭するだけで、かなり汚れが落とせ(というか、汚れにくい)ウレタン塗装のすばらしさを再認識しました。
衝撃と熱がウィークポイント
しかし、衝撃や熱で出来た被膜の変色や変質は、一旦塗装被膜を剥がさないと修復が出来ません。日常は、できるだけ丁寧に取り扱うことが求められます。
ウレタン塗装は、被膜が中の木材を保護していますので、被膜のみの傷なら木材内部に水分等の浸透が発生しないので、多少の傷は見過ごしても大丈夫ですが、木材に達する傷は早急な対応が必要です。
細かい傷であれば、ウレタン塗装用のタッチアップ(塗料)を筆で塗る方法もありますが、修復部位が目立ちますので技量が求められます。必要な場合は、塗料を扱っている店でご確認下さい。塗り直しは、DIYでは難しい作業ですのでプロにご相談ください。
(注1)ベンジン、エタノール、ウレタンスポンジ:これらの溶剤や研磨スポンジは、メンテナンスには相応しくありません。材を痛めますので使用しないで下さい。今回、実験を前提に使用してその有用性と無効性をお伝えするため特別に使用しました。あしからずご了承願います。
2017年6月15日
自然塗料塗装材のメンテナンス法
自然塗料塗装材の汚れ落とし実験をしました。
実験用に無垢のビーチ材を用意し、左半分に自然塗料塗装を施し、右半分は無塗装のままで、食品や画材などの汚れをつけたものをきれいにする内容です。
材の左半分に自然塗料を塗装した材で汚れ等の実験を実施
実験対象材:左半分を自然塗料(クリアー)を塗装したビーチ材、右半分は無塗装の材を用意して実験をしました。
汚れ落としの実験
無垢材の半分だけ、自然塗料を塗装し、無塗装面での汚れの落ち具合いも比較観察できるようにしました。
今回、汚れの素材に選んだの以下の通りです。手垢は、水拭きと希釈した中性洗剤で落とせるのであえて検証は行いませんでした。
汚れのジャンル | 汚れの素材 |
食品汚れ |
コーヒー、しょうゆ、ケチャップ、中華調味料(豆板醤) |
画材汚れ |
水彩絵の具、色鉛筆、墨、油性ペン |
【実験概要】
実験要領:いずれも、汚れを付着させてから1時後に汚れを拭きとり、希釈した中性洗剤(注参照)を布に含ませて払拭する。
実験用具用材:中性洗剤(水で希釈したものを用意)、メリヤス生地、ティッシュ
実験は、マルトク工場内にて6月上旬から中旬にかけて常温で行いました。
実験 汚れを落とす |
(試験材の左半分を自然塗料塗装を施しています。)
[食品汚れ]
コーヒー
写真左:コーヒーをこぼして1時間放置。写真中:無塗装面にかなり拡がったコーヒー跡を、水拭き後希釈した中性洗剤で汚れを払拭した状態。自然塗料塗装を施した材の左側は、かなり汚れがとれましたが、無塗装部分は、染みが残りました。
しょうゆ
写真左から:しょうゆは、拭き始めは跡が残りますが水拭きした後に希釈中性洗剤で拭くと徐々に跡が分からなくなりました。
ケチャップ
写真左:ケチャップを対象材の上にこぼす。写真中:1時関すると無塗装面で目立って水分が拡がった。写真左:希釈した中性洗剤で払拭するとほぼきれいになった。よく見ると無塗装面側では、うっすら色素が残った。
豆板醤(とうばんじゃん:中華料理調味料、油と唐辛子等配合)
写真左:中華料理の調味料「豆板醤」をこぼし1時間放置。写真中:汚れをすくい取った。油分は1時間程度ではほとんど染込み確認はできませんでした。唐辛子の色素沈着は若干残りました。写真右:希釈した中性洗剤を含ませた布でふき取った。洗剤だけで汚れが落ちない場合は、サンドペーパーでの研磨が必要です。
[画材汚れ]
水彩絵の具、色鉛筆
写真左:上から水彩絵の具(ビリジアン色)、色鉛筆(赤色)で汚し、1時間放置。写真中:水拭き後、希釈した中性洗剤で拭きとる。左半分の自然塗料塗装部分は水彩絵の具がまず最初に落ち、更に払拭すると色鉛筆も消え始めた。当初より目立たなくなった。(写真右)
墨
写真左:墨で材を汚す。写真中:水拭き後、中性洗剤で固く絞った布地で拭く。写真右:拡がった汚れをティッシュ等で拭き取りながら希釈洗剤でふき取る。無塗装部分は、墨の色素が沈着した。
墨は、昔から表札などで使用されており定着の良い成分です。今回も実験で無塗装部分の墨汚れが、ほぼ残りました。しかし自然塗料塗装が施された左半分は、墨の成分は材に吸収されず希釈中性洗剤でかなり落とせました。
実験では、円を描くように払拭したので、無塗装部分では汚れが拡がってしまいました。余分な水分や汚れは随時ティッシュペーパーなどで除去しながら拭くといいでしょう。最終的に、拡がった墨汚れ部はそれなりに汚れが落とせました。
墨汚れの除去のコツは、汚れた部分のみ集中的に払拭し、汚れていない部分に拡げない事がコツのようです。
油性ペン
写真左:油性ペン跡は、材左半分の自然塗料塗装部分は、中性洗剤で1分程拭くと写真右のように若干薄くなります。続けるとインク跡は薄くなりますが同時に塗装面の塗装色も若干薄くなります(写真右)。
油性ペンのインク跡の除去には限界があります
力を入れるよりも、汚れが付着していない布面で汚れを布地に移す気持ちで拭き取ります。余分な水分はティッシュなどで随時拭き取りながら、汚れが拡がらないようにします。
跡が消えない場合は、塗装面ごと削るサンドペーパーでの研磨が必要です。
自然塗装の場合は、 水、中性洗剤で固く絞った布地で拭きます。完全には消すことが出来ませんがかなり薄くなります。油性ペン跡はインクの浸透性も高く中性洗剤では汚れ落ちに限界がありました。
禁じ手の溶剤を使ってみました。※材が傷むのでご使用しないで下さい。
実験なので、禁じられているベンジン、アルコールを用いた実験も行いました。無塗装の材を用いて、油性ペン跡の汚れを除去できるか試してみました。(あくまでも、これらの溶剤を用いても木地を痛めるだけで汚れが除去できない事をお伝えするためにあえて実験しました)
ベンジンやアルコールでも油性ペン跡は消えない
写真左:ベンジンで油性ペンを用いて無塗装材に直接落書きをしたを拭いてみましたが、瞬時に揮発し溶解もせずほとんど変化しませんでした。(無塗装材にて実験)写真右:アルコール(無水エタノール)を吹きつけると、滲みはしたものの消すことは出来ませんでした。(無塗装材にて実験)
以上 実験終わり
手垢汚れ
手垢が目立つようなら、希釈した中性洗剤で堅く絞った布で払拭してください。拭いた後は、乾拭きして水気が残らないようにしましょう。くれぐれも、ベンジンやエタノール(アルコールもしくは、エタノール配合のウエットティッシュ等)の使用は避けてください。
自然塗料塗装材のメンテナンスまとめ
自然塗料の塗装を施した材のメンテナンスの容易さも素晴らしいものでした。
ただし、自然塗料の効用を維持するためには定期的に専用ワックスや自然塗料の塗布が必要ですが、そういった手間を惜しまない方には、お勧めの塗装方法です。
今回、汚れを除去する実験のなかで水だけで落とせないものか試してみましたが、材の片面だけに水分が吸収され若干ですがソリが発生しました。汚れを除去する際は、汚れをすくい取れる場合は下敷き様のものですくい取り軽く水拭きした後、希釈した中性洗剤で汚れを落とすのが最も効率が良かったです。
自然塗料塗装面の汚れを払拭すると、その強度によって若干塗装が薄くなる場合があります。汚れの度合いよっては、サンドペーパーがけをして自然塗料塗装をしたほうが良い場合もあります。ご使用の度合いによってご判断下さい。
メンテナンス用、自然塗料専用ワックス(カルナバワックスエマルジョン)
水性のメンテナンス用ワックスです。通常の木部のお手入れは水拭きで充分ですが、汚れが目立ってきた際、お試し下さい。塗装面の汚れを落とし、自然な艶を引き出します。(マルトクショップで取扱っています)
https://shop.woodworks-marutoku.com/products/coating/item/toryo037.php
自然塗料を塗装しておけば、メンテナンスが容易です。(写真は、半分だけ自然塗料クリアーを塗装した実験検証後の無垢材です)
自然塗料を塗装していない部分のみ汚れが残っている。
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無塗装について
無塗装材は、一旦汚れや染みが発生すると、払拭だけでは取れなくなります。染みの除去はサンドペーパーがけが必要です。そういった状態を避けるため、材の保護。末長く木肌の味わいを楽しむために自然塗料(クリアー)がお勧めです。
現在、無塗装でご使用の方はこの機会に自然塗料塗装をご検討されてみてはいかがでしょう。DIYでできます。