2018年5月10日
〜前川材木店の発想に触れる〜
伝統と地域、健康と建築、エコで快適を求めた
香川県の茶どころ三豊市の「高瀬」に創業100年を超える建築会社があります。
香川県の持家率は、全国ランキングで14位。四国の中では1位、県民の約7割が持家という県民性があり、おのずと家にこだわりを持つ方も多く、ロードサイドには住宅会社が軒を連ね、書店では家づくりの書籍が目立つ場所に積み上っています。
そんな香川で、闘病中に出会った1冊の本に魅かれ、ドイツに渡り自分なりの解答を見つけられた建築家がいます。
前川博樹社長は26歳の時、お子様誕生の僅か1ヶ月後に難病に身体を蝕まれます。死と直面し改めて人生と仕事に対峙し、後にそれまで勤めていた大手ビルダーを退職し、実家の前川材木店を引き継がれた経歴の持ち主です。
前川社長が病魔との戦いの中で次第に心が目指し始めた「自然素材の家づくり」への思いが募ったのは、闘病中に出会ったホルガーケーニッヒ著※「健康な住まいへの道ーバウビオロギーとバウエコロジー」です。その本に魅かれて、ドイツへ渡り、「自然素材の家づくり」が、確信となり現在の前川材木店の家づくりに継がれることになりました。
命に優しい家づくり
土に還る家は
人にとって心地いい
一番のエコは「元に還る事」とするならば、おのずと家づくりに必要な建築資材は、自然系になる。「言うは易し」ですが、実際に自然に還る建築資材を起用する大変さは創造するまでもなく大変ですが、前川社長は飄々と意思を貫かれています。
ローカルとグローバルを
見事に具現化された
「住まいの思想」
世界の流れは、資源もエネルギーも「再生可能」が主流です。一方、ローカルでは「地方・地域文化資源の再発見」と叫ばれており、前川材木店では見事に踏襲されています。
「杜の家」構想
ドイツで学ばれた先進の思想をバックグランドに、エコハウスづくりは「継承された職人技術」や「建築資材」など、それらを地域の暮らしに落とし込んでゆくと、日本建築の伝統の技〜木と土の〜「杜の家」へと繋がったのだそうです。そのあたりに、先進性と地域を大切にされ、多勢に流されない前川社長の信念を感じました。
日本建築が育んだ技法や素材を惜しみなく活かす
大切にしたい、伝統の技。日本のエコな家づくりに欠かせない最強の技を適材適所に取り入れられています。
地域に根ざした建築を考える上で、健康を守り心を優しく包む瓦屋根、土壁、焼き杉板、漆喰を積極的に取り入れて根本的な快適さを追求されています。
木と土で作る土に「還る家」は、「環境には負荷をかけない」をテーマに前川材木店の〜木と土の〜「杜の家」は、日本古来から伝承される先人達の知恵と、環境や人にまつわる状況が変わってきた現在において新しい「家」の概念そのものと感じました。
伝統技をベースに最新の建築素材も積極的に
瓦屋根、小舞・土壁、焼き杉板、漆喰、スイス氷河粘土塗料、自然健康塗料、珪藻土、和紙、雨水利用システム、炭素埋設、オガファーザー、薪ストーブ、天然オイル仕上・天然樹脂仕上コルクタイルなどほとんどが天然素材をベースにした建築資材を用いられていますが、前川社長の価値基準は、新旧関係なしに「命に優しいもづくり」に必要と確証を得たものであれば国内外産を問わず起用されています。
〜エコは結局、経済的〜
小さな投資で得られ満足度がとても高い「漆喰」
漆喰は、専門技術を持った職人の手仕事で塗られる為、費用もかかりますがクロスのように経年劣化せずに長期間使用でき、しかも調湿性、シックハウス症候群にも有効なので積極的に施工を薦められておられます。またスイスロームなどの塗り壁なども物件毎に使い分けて満足度を高められておられました。
価格以上の顧客満足度のある「無垢の幅ハギ材」
前川材木店さまでは、以前から弊社マルトクの無垢ハギ板や床材を数多くの現場でご使用頂いています。無垢の一枚板と違って豊富な樹種とコスト面でも利用しやすいとのご評価を頂いております。
前川社長の「エコ住宅」の概念
強力な空調設備を使って家の中の不純物質を徹底的に除去する事がよしとされていましたが、室内の空気だけを浄化しても外に排気すれば同じこと。それならはじめから環境を汚さないように努力すればいいと言うことに気付かれました。
人や自然界に負担をかけないために、再生可能で持続可能な素材を利用することに至られたのです。思っては見ても、実践するには様々な障壁をクリアする力が前川社長にはあります。
「アクティブ」と「パッシブ」の融合
従来からある電気、石油、ガスなどによる冷暖房を行う「アクティブエネルギー」に対し、エコハウスやスマートハウスと呼ばれている太陽、風、水、樹などの自然エネルギーを最大限利用して冷暖房を賄う「パッシブエネルギー」があります。
前川社長は、いずれかのエネルギーに依存するのではなく、両者のいいところを融合させたエコを目指しておられます。
将来的には、何れのエネルギーもさらに進化してゆくでしょうが、現時点ではうまく融合させる事が大切だと考えられています。
・‥‥……━━……‥‥・
【㈲前川材木店様HP 施工事例】http://kinoiedukuri.net/works/
・‥‥……━━……‥‥・
取材を終えて
前川材木店は、数年前に100周年を迎えられ老舗中の老舗。4代目の前川社長は、実によく勉強されており自然建築資材の知識を幅広く熟知されています。自然素材のもつ力を引き出すには、素材の持つ特性を知らなければただの装飾に終わってしまいますが、伝統的な技法や職人の技量を熟知している事が条件です。
海外での体験や学びをそのまま取り入れるのではなく、思想を見事に日本風味に着地させた柔軟性と先進性が素晴らしいと感じました。
若き頃の闘病を克服した後の、どん欲さとブレない信念が行列の出来る建築工房となった事に納得が行きました。
家づくりは、ともするとデザインや機能、便利さに意識が行きがちです。それらもとても大切ですが、日本で心地よく健康に過ごすために何が大切かを考えると、とてもシンプルなのかもしれません。一時のお客様が喜ぶ家づくりではなく、長年住んでじわじわ良さが感じる家こそが、前川材木店、前川社長が求めている家づくりなのだと確信を得ました。
命に寄り添う家づくり
前川社長の話を聞いていると、多くのお客様が「お任せ」で住宅を発注されている事に驚かされます。人柄もあるのでしょうが、スタッフも一丸となって「命に寄り添う」住宅づくりの姿勢に共感し、住宅建設という機会を楽しく共有しているようです。
「伝統と先進性」を奇をてらわずに、きちんと気持ちよく仕事をされている前川材木店をこれからも注目したいと思います。
帰り際に、前川社長が「同じ思いで建築に取組まれている方との出会いを心待ち」にされていると言われました。関心の有る方はぜひ前川材木店の前川社長にコンタクトを取られてみてはいかがでしょうか。
お忙しい中、取材にご協力をいただきましてありがとうございました。
・‥‥……━━……‥‥・
http://kinoiedukuri.net/
・‥‥……━━……‥‥・
2018年4月20日
樹種選びのポイント~どの木を選べばいいの?
スタッフお薦めの樹種
毎日、木材に触れているスタッフのお薦め樹種は?
2018年3月22日
樹種選びのポイント~どの樹種を選べばいいの?
豊富に樹種はあるけれど、いったいどの樹が目的に適うのか
樹種を選ぶ その4
産地で選ぶ
北米産:環境性能基準に適応し安定した生産性を誇る人気樹種が豊富です。個性のバリエーションも幅が広いです。
南米:ユーカリは、南米での植林が進み、イタリアから人気が高まる今後有望なホープです。
施工例の紹介
これまで、マルトクショップでご購入頂きましたお客様の施工事例です。見事に、樹種の個性を活かした施工例には、毎回関心します。無垢材と、集成材の施工事例をご紹介しましたので、樹種選びのヒントにして下さい。(施工事例をもっと詳しく見たい方はマルトクホームページをご覧下さい。
様々な施工例(無垢材編)
様々な施工例(集成材編)
2018年2月27日
樹種選びのポイント~どの木を選べばいいの?
豊富に樹種はあるけれど、いったいどの樹種が目的に適うのか
色と、木目で選ぶ
五感を駆使して「感じる樹種」を選びましょう
前回は、価格と硬さに焦点を絞った樹種の選び方をお伝えしました。
今回は、木材の醍醐味でもある色と木目に焦点をあてて樹種をご紹介します。
巻末に、木材サンプルのご案内をしていますので、ぜひご活用ください。サンプル購入されると、購入時に割引サービスがございますので、樹種選びに迷ったら、お手元で実際の木材に触れてお確かめください。
色の濃さで選ぶ
木の色は、おおむね茶系ですが、じっくりと眺めていると、茶系でも、白っぽいものから、黄、緑、赤、黒に近い色の樹種があります。
経年で、色が濃くなる樹種や逆に明るくなってゆく樹種などもあります。代表的なものとして、ウォールナットは当初は濃い茶色ですが、次第に柔らかい色に落ち着くと言われており、ブラックチェリーは、次第に色が濃くなってゆくと言われています。
そのあたり、樹種特性はマルトク木材辞典などをご参考にしてください。
経年変化は、天然木の醍醐味
経年変化は、使用環境や塗装の状態等により異なりますので、そうなるとは断言は出来ません。しかし緩やかな色の変化はとても自然で、愛着がわく変化でもあります。
木材は、自然の恵みです。そういった変化も含めてお楽しみ頂けると幸いです。
●樹種別濃淡チャート
天然木ならではの味わい
木材は、心材(赤身)、辺材(白太)があります。樹心周囲部分の色の濃い心材は樹脂の割合が多く、水分が少なく、強度、耐久性に優れています。一方、樹皮に近い白い辺材(白材)があります。下記は、それらのコントラストが強い材の例です。
天然木ならではの味わいと個性は、世界で一つの固有性に富んでいます。
心材(赤身)と辺材(白太)
天然木の醍醐味
木目がはっきりした材は、表情豊かで天然木の存在感を存分に醸し出してくれます。経年とともに、滲み出る味わいも魅力的です。空間にアクセントを添えます。
塗装で引き立つ木目
何れも、自然塗料塗装をすることで更に木目の表情が浮かび上がります。存在感を木目で訴求するなら「はっきりした樹種」を、細かな細工のある家具であれば、木目の目立たない樹種が一般的ですが、個性を強調するものであれば、逆に木目のはっきりした樹種を選ぶのも方法です。いずれにしろ、用途や空間イメージに合わせてお選び下さい。
マルトクショップのホームページでは、他にもお客様から寄せられた施工事例を掲載しています。樹種別や、用途別でも閲覧できますので、ご検討の際にご覧下さい。TOPページの下方に掲載しています。
( 次回へ続く )
木材サンプルのご案内
五感で樹種選びをしよう
木材との長い付き合いを考えると、写真だけで判断するのは難しいと思います。
実際の樹種を手に取って五感で判断するのもお薦めします。木肌の風合いをご確認下さい。
マルトクショップでは、2種類の大きさのサンプルを販売しています。小さな木札サイズと、手のひらサイズのものを用意しています。
塗装済みサンプルもあります
希望の樹種が含まれていない場合や、別途サイズのものが必要な場合は、ご相談下さい。一部の樹種では自然塗料塗装を施したサンプルもあります。サンプルをご購入されたお客様には、フリーカット木材の注文時、備考欄に「サンプル購入済み」とご記入していただくと。サンプル購入後1度限定で割引サービスの対象となります。詳しくは、サンプル購入ページをご覧下さい。
※サンプル製造には留意していますが、実際にご注文を受けて出荷される材の一部分ではないためロットごと、またサンプルカットの位置によりイメージが異なる場合がございます。木材は、自然の素材ですので、どうぞご了承のほどお願いいたします。
2018年1月31日
樹種選びのポイント~どの木を選べばいいの?
豊富に樹種はあるけれど、いったいどの樹が目的に適うのか
樹種を選ぶ その2
無垢材と集成材の利用頻度
マルトクショップでは、お客様の施工事例をご紹介しています。これまでにご紹介させていただいた情報を分析すると、無垢材と集成材の利用割合は「テーブル・机」部門では無垢材と集成材の利用割合が、ほぼ半々でした。
一方「棚板」部門では4:6の割合で集成材がよく利用されていることがわかりました。あくまでも、施工事例に応募していただいた中での分析ですが、参考程度にご覧ください。
テーブル・机用に採用された無垢材と集成材の割合
テーブルや机用に購入された無垢材と集成材の割合は、ほぼ半分半分です。(左図)
マルトクショップに寄せられる施工事例から調べた結果、無垢材も集成材もほぼ同じように選択されています。
使用する空間イメージや、様々な目的で多様に選ばれていることがわかります。
樹種を選択する際は、集成材でも無垢材でもイメージと予算で多様に選択していただくのがいいと思います。
※左図は、2016年5月16日~2017年12月14日にマルトクショップお客様施工事例で紹介された「テーブル・机」部門の施工事例中、直近の100件を抽出して集計したものです。
棚板には、集成材がやや多く使用されています。
一方で、棚用に使用されているのは、4:6の割合で集成材が無垢材よりも採用される割合が多いです。(右図)
棚板の場合、テーブルに比べて見える面積も比較的少ないためか、リーズナブルな集成材の使用が若干多いようです。
※右図は、2015年4月15日~2017年12月19日にマルトクショップお客様施工事例で紹介された「棚」部門の施工事例中、直近の100件を抽出して集計したものです。
硬さと価格で選ぶ
樹種選びで、気になるのが価格です。目的に合わせて樹種内容(硬さなど)と価格から選ぶのも方法です。
用途によって、木材の硬さはとても重要な要素になります。やわらかい木材は、加工がしやすい半面、傷が付きやすく、硬ければ加工が難しい半面、傷がつきにくいといった特性があります。
逆に、加工しやすさだけで選ぶと、傷が付きやすい問題が発生します。マルトクショップでは、自由に樹種を選んでいただくために、様々な加工サービスを提供していますので、ぜひご利用ください。
硬い材は、加工まで依頼するのがいい
硬い樹種の加工は、お申し込み時に併せて注文頂けるとDIYも楽々です。
テーブルであれば、一般的に比較的硬い素材を用いられることが多いです。木材の硬さは、概ね木材の比重と正比例しています。比重の高いものほど硬く、作業に技術と時間を要します。穴あけやねじ止めの際、下穴無しでは難しくなります。
実際には、硬い木材なら木材をご注文時に、穴あけや、面取り、切り欠き(一部を凹状態にカット)などの加工を併せ注文すれば、硬い木材でも問題ありませんので、樹種選びに幅ができます。
硬さと価格で選ぶ
無垢材と、集成材それぞれの「硬度と価格」チャートを示しました。チャートは、マルトクショップのホームページに掲載されているものと同じですが、例として「テーブル・机」に相応しい樹種をオレンジのラインで囲っていますので、参考にしてください。
実際は、用途やイメージで、自由に選んでいただければいいと思います。
【樹種チャート:「硬さと価格」比較一覧表】
無垢材チャート
樹種が豊富な無垢材
集成材チャート
リーズナブルな集成材
マルトクショップ:木材の硬さ・価格チャート https://shop.woodworks-marutoku.com/chart/
価格で選ぶ
概ね、樹種候補が決まれば、あとはご予算にかなうものをお選びください。
同じサイズの材でも、樹種によって価格は大きく変わります。ウォールナットの集成材と無垢材(白太無し)とでは1.5倍の価格差があります。タモでは2倍以上の開きがあります。予算に併せてお選び下さい。
下記表は、同サイズの材の価格を、樹種別、無垢材、集成材別に試算してみました。(価格は、変動します。あしからずご了承の程ください。)
樹種の価格を見る
希望のサイズが決まったら、価格のチェックをしましょう。複数の樹種での価格は、TOPページの「複数注文」ボタンから進むと、容易に樹種毎の価格見積を見る事が出来ます。ご予算に適う樹種を選びましょう。
マルトクショップの「複数注文」ページなら、ページを移動せずに自動見積もりが表示されますので、操作の手間が省けて便利です。
次回は、「樹種選び」第三弾として、硬さ、価格、色、用途で樹種を選ぶを予定しています。
▼▼▼