2021年4月22日
マルトクショップでは時期によって前後しますが、常に40種前後の樹種を取り扱っています。取り扱い樹種の多さはマルトクショップの注力している点でもあるのですが、反面、樹種選びに迷ってしまうお客様もいらっしゃるのが現実のところです。今回からのもくもく通信では、お客様の木材選びのサポート編と称して、用途別の樹種の選びかたとお勧め樹種をご紹介します。
前回更新:テーブル天板におすすめの樹種
目次
– – 【1】デザインにあった堅さ・重さ
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一般的な住環境のなかで、戸棚や食器棚を含めて棚がひとつもない家というのは珍しいのではないでしょうか。何を置くにしても、日常生活のなかで棚はとても重要な家具です。
実際にそれを表すように、お客様からマルトクショップにご投稿いただいている「木材を使った素敵な作品」でも、棚の制作事例はテーブルに次いで多くなっています。
棚に使う樹種選びは、テーブルやカウンターなどの天板としての利用とは少し違ったポイントがあります。最終的にはもちろん作り手の好みが全てではあるのですが、材木屋目線でのお勧め樹種と人気の樹種をご紹介したいと思います。
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棚に使われる木材は、天板として使う場合に比べ、柔らかく軽い木材も多く選ばれます。理由としては、棚は用途のバリエーションが多く、サイズやデザインによって適した樹種が大きく異なることが大きいです。
一口に「棚」と言っても、その種類は本当に様々。卓上で使うような小さな整理棚から壁一面の壁面収納まで、全て棚で表現できてしまうようなオールマイティな家具なので、当然そのサイズやデザインによって重視する部分が変わってきます。
“見せない棚”なら軽い木材がおすすめ
もちろん見せる収納にも大いにお使いいただけます(写真はメルクシパイン)
クローゼットや納戸の中など、普段あまり目に触れないような場所に設置する棚であれば、木目や色の好みというよりは”リーズナブルで軽い木材”がお勧めです。特に狭い部分に設置しなければならないような場合は、木材は軽い方が扱いが楽な上、加工もしやすいのでDIYも簡単です。
木端・木口程度しか目に触れることもないので、もしも周りとの色の差が気になるようであればステインで着色してしまえば目立たなくなりますよ。押入れの中など、臭いがこもるのが気になる場所に設置する場合は、桧などの消臭の効果がある木材を選ぶのも面白いかもしれません。
重量にも注意
また、1枚の棚板がとても大きい場合も、ある程度軽い木材の方がDIYでは扱いやすいです。特に作業人数が確保できない場合は木材の重さは重要です。木材は体感重量の重い素材なので、同じ重量の金属や水を運ぶよりも木材はずっと重く感じます。
板の目安の重量は購入時の注文フォーム上に自動計算されますので、自力で運べる限界の重量よりも軽い板を購入することをおすすめします。
▼軽くて扱いやすいおすすめ樹種
杉 |
桧 |
ノースパイン(赤松) |
ラジアタパイン |
メルクシパイン |
米栂 |
薄い板でスッキリ仕上げたいときは堅い木材で
軽軟な木材はどうしても強度に関しては劣るので、棚板や側板の薄い、スッキリしたデザインに仕上げたいときには堅い広葉樹がおすすめです。また、木端・木口にビスを打ったりするようなデザインの場合も柔らかい木材だと使っていくうちにビスに負けてしまう可能性があります。
▼強度のある広葉樹おすすめ樹種
タモ |
ナラ |
ビーチ(欧州ブナ) |
ホワイトアッシュ |
ゴム |
バーチ(カバ桜) |
ただ棚に関しては設計や金具の使い方でそうした部分もかなりカバーできるので、同じ大きさの棚を作るとしてもデザイン先行か設計先行かで使える樹種も変わってきます。どの樹種であればどの程度の厚さが必要なのかは、図面をお送りいただければご相談も承っていますので、迷った際にはぜひご相談ください。
図面は内容が分かれば手書きでも結構です、有料でCADの図面を作成することも出来ます。お気軽にお問い合わせください。
壁面収納やディスプレイ棚など、インテリアの一部として設置する棚の場合は、樹種の見た目も非常に大切。周りのインテリアを考慮して樹種を選ぶと良いでしょう。いくつかの人気樹種では無垢材と集成材の両方を取り扱っていますので、側板だけ好みの無垢材で作って、棚板などあまり目に触れない部分は集成材、背板はベニヤなど、パーツによって木材を使い分けるとコストも抑えられます。
また、DIYの案として時折見かけるのが、棚板の一部を簡易のデスクとして使う、机と体化したタイプの棚。そうした場合、ものを置くだけの棚と違って、上で作業をしたりする天板として使える樹種を選ぶと使いやすい簡易デスクになります。
木材の色・価格・堅さなどを一覧で見たい方は、こちらのページからご覧いただけます。 |
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2021.2.9現在のデータ N=291
樹種選びは好みだと言うけれど、実際にはどんな樹種が人気なのかも気になるところ。棚のDIYにどんな樹種が選ばれているか、マルトクショップにお送りいただいた作品を集計してみました。
上位こそ人気広葉樹が占めていますが、5位以降は天板のときにはランク外だった針葉樹が占めているという結果に。用途によって木材が使い分けられているのが分かる内容になりました。
天板でも一番使われていたタモが棚でも投稿件数が多いという結果になりました。タモは木目が美しいだけでなく材質がしなやかで優れているので、棚板にも安心してお使いいただけます。
見た目が綺麗なので、リビングやくつろぎのスペースなどのインテリアとしてもおすすめです。
ナラは集成材の使用が多く、第二位となりました。木目が美しく頑強な材質なので強度が求められる用途にはお勧めです。ナラの無垢材は節が男前な雰囲気です。
高級木材ウォールナットは棚でも人気という結果に。新築物件の作り付けの棚への使用にもおすすめです。他の樹種には無い深い色が特徴的で、しっかり仕上げて塗装をかけると本当に綺麗です。
リーズナブルな広葉樹代表、ゴム材も天板に続いて人気でした。コストパフォーマンスと強度を両立させるのであれば一番おすすめな樹種です。
色が明るく木目に癖がないので、インテリアに合わせてステインで着色すれば高級感が出てどんなお部屋にもマッチします。
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棚板加工をすれば可動棚が簡単に出来上がります
棚は側板の有無や設置の方法によっても全然作り方が変わってきます。どんな棚を作るにしても、ある程度基本的な加工や塗装しておくと長く使える使いやすい棚になります。
棚をDIYする際に必要な加工、おすすめな加工をご紹介します。
木端や木口を磨いてノコ目を落とし、肌当たりが良いように面取りして角を丸める加工です。装飾的な意味はもちろん、手が当たっても角やささくれが当たらないように安全性を高める意味合いもあります。施工の方法にもよりますが、少なくとも物を置く手前側(=手が当たる可能性がある)には面取りを行った方が良いでしょう。
天板の角を丸くする加工です。家具の天板に行う加工としてはとても一般的で、一見切りっぱなしに見える板でも、角に数ミリ程度の丸みをつけている場合がほとんど。
体に当たったりする可能性がある低い棚などは、写真のようにコーナーR加工をしておくと手が当たったりしても安心です。
棚の側板に棚受け用の穴(三ヶ所)を開け、棚板に滑り止めの溝を掘ります。一般的な固定棚に対し、棚板を必要に応じて付け外しできるようになるのでとても便利な加工です。側板の加工には専用の金物もお送りするので、届いたらすぐにお使いいただけます。
塗装を行うことで木材の反りを防ぎ、汚れや劣化を防ぐことができます。棚に関しても、基本的には塗装を行った方が木材が長持ちするでしょう。
キッチンなど汚れがつきやすい場所の棚にはウレタン塗装がおすすめです。自然塗料塗装はメンテナンスのしやすさが魅力です。
自然塗料の塗装については、場所さえあれば比較的簡単にDIYで塗装できます。価格を抑えたい場合には、DIYがおすすめです。
木材の加工について詳しくは、もくもく通信にて解説していますのでご覧ください。 |
今回は棚に適した樹種についてご説明しました。棚は天板などでの使用と違い、DIYする上で何を重視するか、また製作の方法によっても撰ぶ樹種が大きく違ってきます。
自由度が高いからこそ、DIYすることで作り手のセンスが光る、自分にぴったりの一つを作ることができますよ。
棚のDIYに関しての記事は下記をご覧ください。
→【棚をDIY】ピッタリサイズの棚を作ってみよう
→カラーアングルを使ったワゴンを簡単DIY
→棚のDIYに!アイディア金物6選