2025年3月1日
DIYに興味がなくても、新築やリフォームの検討中など人生の節目で選ぶ機会も出てくる「無垢材」「集成材」。いったいどんな樹種おすすめなのでしょうか?今回のもくもく通信では、基本の木材である無垢材について、その特徴やメリット、材木屋から見たおすすめ樹種をご紹介します。
目次
無垢材とは?プロの教えるおすすめ無垢材
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出番を待つ加工前の一枚板
無垢材という言葉は、木材やDIYに興味のない方でも一度は聞いたことのあるワードなのではないかと思います。「無垢=混じり気のない」という言葉が指すように、本来無垢材とは加工をしない、樹木から切り出したままの「100%木材の板」をそのまま使用した素材のこと。古来から人の暮らしと共にあった無垢材は、人の体に優しく快適に使用できるポピュラーな素材であり、美しい木目や色には他の素材にはないデザイン性を持っているのが特徴です。DIYの素材や建築資材としての無垢材は、下記のような利用のされ方をする場合があります。
ちぎりの入った一枚板のテーブル(アメリカ広葉樹協会提供)
一枚板とは本来の無垢材の意味合いとほぼ同義で、木材から切り出した板そのもののことを指します。天板に使える様な大きなサイズの板は長い年月をかけて育った大木からしか切り出すことができないので、希少価値の高い素材です。通常であれば欠点として切って破棄されがちな幹の中の小さな空洞やひびも、ちぎりなどで丁寧に処理して使用されます。コストパフォーマンス的には価格が高くなりがちですが、途切れることのない完璧な木目は唯一無二の価値ある美しさです。
木口(断面)を見ると接着部位は分かりやすい
100mm前後の無垢板を幅方向のみに貼り合わせて天板等に使用できるサイズに調整することを幅はぎといいます。天板として使用できるような無垢一枚板は稀少で樹種も限られること、厚みや長さ方向は切断接着することなく、幅方向のみの貼り合わせで加工が少ないことから内装用木材としてはこの無垢幅はぎ板が無垢材として扱われることも多いです。
ある程度サイズに自由がきくので、本当に好きな樹種を思い通りの用途に使うことができるのが最大の魅力です。
連なった美しい木目を楽しめるのは無垢だからこそ
無垢材の魅力はたくさんありますが、木材の美しさを一番活かせる使い方であるということがコスト面などのデメリットを覆す魅力であることは間違いありません。木材を伐採、製材、乾燥、加工したのちそのまま使用する無垢材は、樹種ごとに異なる色や木目を最大限損なわずに楽しむことができる素材。特にその木の歴史や個性を一番感じることのできる大切な要素である木目は、少しでも少ないカットで使うことでよりはっきりと流れのある模様を感じることができます。
生きている樹木から切り出した自然素材である木材は、工業製品とは違ってたとえ同じ樹種であっても一枚一枚が個性豊か。この世に二つと同じ板はありません。
特にフローリングの質感は他の素材と全く別物
耐荷重量や伸縮性、防汚機能など、木材よりも「材質の優れた内装材」は今の時代いくらでも開発されています。木材などひとつも使わなくても家が建つ技術のある現代に、それでも木材が愛されている理由はその美しさと質感が他にないものだから。
木材はその中に空気を含み、そうした素材の構造上木材は金属や石と比較して熱伝導率が非常に低いという特性があります。夏はひんやりと・冬はほのかに暖かい、樹脂や石材には出せない柔らかくベタつかない触り心地が人の感じる心地よさに通じるものだからこそ、はるか昔から人間は木のある家で生活してきたのかもしれません。
木材を多く使った室内は湿度調整がされやすい
「木材は呼吸する」という言葉は木材を販売するなかでよく使われる表現のひとつです。木材は多孔質材料と呼ばれる素材で、表面に無数の小さな穴が開いていてそこには空気の出入りがあります。湿度の高い時にはその穴を通じて空気中の水分を吸収し、乾燥している時には放出する働きがあることから、無塗装や自然塗装(木材の表面を完全にコーティングしないオイル塗装)で仕上げた無垢材には空気中の湿度の変化を小さくする作用があるのです。
ちなみにこの水分を吸収するという性質は木材が反る原因でもあるので、快適にお使いいただくためには適切な塗装と固定を行うことが大切です。
木は空気中のCO2を物質として「固定」してくれる
きちんと計画された植樹林由来の木材に関しては、SDGsの観点から見ても問題のない持続可能な素材でもあります。木材は成長が活発な時期は吸収する二酸化炭素よりも排出する酸素の方が上回ることから、計画的に植樹と伐採を繰り返すことで地球温暖化対策に貢献できる上、使った後はまた再び土に還る、持続的に生産、再生を繰り返すことができるエコ素材でもあります。
森林の伐採と生産の取り組み状況は国によっても異なりますが、特に自然環境にも考慮して計画的に生産されているのがオーストラリアやアメリカ産の広葉樹。こうした背景を知って、木材の産地を調べてみるのも面白いものです。
メリットで挙げた無垢材の調湿作用は、実はデメリットにも繋がっています。無垢材は空気中の湿度を吸収する特性があることから、周りの温度や湿度によって微妙にサイズが変化すると言う特性があります。湿度でサイズが”動く”素材なので、天板や棚板など一定以上の大きさの無垢材は必ず適切に固定して使用することが大切です。床材のようにびっしりと無垢材を敷き詰めるような施工の場合には、収縮と膨張を見越して施工する必要があります。
こうした膨張と収縮は無垢材を使う上で絶対に知っておいて欲しい特性のひとつ。また、樹種や塗装の種類によっても出方が異なります。
無垢材とは生きている樹木を伐採して乾燥し、そのまま使用するいわば天然素材。元々生き物である訳なので、当然ムラなく均質な素材ではありません。樹種にもよりますが、同じ丸太から採れる無垢材でも芯材と辺材(白太)の色や比重(固さ)は大きく異なる場合があります。また、表面近くの材には節があったり、樹脂による模様(ガムポケット)、生きている時に表面が傷ついた部分には入り皮と言って樹木の表面の皮が入り込んで筋状に見えることもあります。そうした無垢材特有の特徴は、欠点でもあり個性でもあります。
無塗装や自然塗装で仕上げた無垢材は、定期的にワックス等を塗り込む定期的なメンテナンスが必要です。このお手入れはウレタン樹脂等の木材を完全にコーティングするような塗装を行ってしまえばほぼ不要になる(通常の埃取りや水拭き程度)ので、無垢材が好きだけれどお手入れの時間を取ることが難しいような場合には、そうした選択肢もあります。(無垢材の手触りや熱伝導性は変わってしまいます。)
使い始めは半年〜一年に一度程度のお手入れが必要になりますが、使っていくうちに木材にしっかりと油分が入り、お手入れの頻度が下がることが多いです。
世界三大銘木にも数えられる優良な樹種であるウォールナットは無垢材でも集成材でも人気の樹種。アメリカンウォールナット・ブラックウォールナットとも呼ばれ北米で生産されているアメリカ広葉樹で、食用で流通しているものとは種類が異なりますがくるみの木です。いつでも人気な理由は、他の樹種と大きく異なる色にあります。
まるでチョコレートのような赤褐色は赤紫色、紫黒色と表現されることもある深い色で、他のいわゆる「茶色い木」とは一線を画す美しい色と木目をしています。濃い色は日光などによる経年変化でゆっくりと明るく変化しますが、白木のような明るい色になることはありません。オイルステインなどの艶出し材もよく吸収するので、研磨して塗装すれば素晴らしいツヤが出る美しい木です。
オークは無垢材として使用されている種類が多く、ホワイトオーク、レッドオーク、国産のナラなど全ての樹種を合わせたらウォールナットよりも人気な樹種かもしれません。オークは導管(木が生きていた時に水が通っていた管)が太く、年輪に沿って並んでいることから木目がとてもはっきりしています。同様の特徴を持つ樹種(環孔材と言います)は他にもありますが、オークは特にこの導管が特に太く見た目や手触りにも影響が大きい樹種です。
オークはケヤキやアフリカ広葉樹のような一部の「スーパーハードウッド 」を除けば無垢材の中でもトップクラスに固い樹種。フローリングや置き家具、天板などに万能に使える人気の無垢材です。
「木目の美しい樹種は?」と言われたらまずご紹介するのがタモ。板目が美しいと言う部分では色味含めオークともよく似ていますが、並べてみるとオークよりは導管が目立たずよりすっきりした印象を受けます。タモと言う名前は「たわむ」から来ていると言われていて、しならせるような荷重に強い樹種として野球のバットなどのスポーツ用品にも使用される樹種です。成長すると比較的大木となるので大きな板も取れやすく、美しい木目が均一に入った板が取れるので大きな一枚板を取ることも可能な樹種です。
節の印象的なナラの無垢材
“無垢材は高い”と言うのが一般的な認識ではあると思うのですが、コストパフォーマンスが比較的良い樹種も存在します。その代表格は我が国を代表する植林樹である国産杉で、集成材と比較しても遜色の無い価格で流通している”コスパ良好”な樹種です。また杉だけでなく、桧やパインなど成長の早い針葉樹は広葉樹と比較してお財布に優しい樹種が多くなっています。
針葉樹はハードウッド(広葉樹) と対比してソフトウッドとも呼ばれ、その無垢板には空気が多く含まれるのが特徴です。その結果木材としては軽く柔らかい樹種が多いのですが、その分加工性が良く独特の温かみのある手触りをしています。
また同じ樹種でも”節・白太あり”の樹種を検討するのもひとつの方法。木材の世界では節や白太の無い板が上等として高価格で流通しますが、必要に応じて補修すれば木材としては充分使える樹種も多数あります。節や白太はその木の生きて来た証。人によっては無地の板よりも好きだからと敢えて選ぶ人も居るくらい、唯一無二の個性的なチャームポイントです。
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建築材料になるまで数十年かかる貴重な素材
現代では優れた建築材料もたくさん開発されており、昔と比べて無垢材にこだわりを持っている人も少なくなっているのかもしれません。ただ壊れにくい歪みにくいという部分だけを見れば無垢材よりも優れた素材は多数ありますが、無垢材の美しさや温かい触り心地と言った部分は人工物には真似できない最大の魅力。迷ったらぜひ、実際に手に取ってみてくださいね。
木材の樹種選び、加工の質問やご相談はお問い合わせフォームより承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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