2017年11月24日
【ソリとの付合い方 その2・・反りの発生実験】
容易に反りは、発生するのか?
反りは、表側と裏側の含水率の変動によって発生する
反りは、材の表面側と裏面側の含水率のバランスの崩れから起ると言われています。普段の生活環境では、極端な含水率の崩れはないので、反りの発生を容易に見る事は出来ません。
そこで、工場の一角で端材を用いて、どのように反りが発生するのか試みてみました。大それた実験ではありませんので、反りの発生するメカニズムを分かっていただければと思っています。
無垢材の片面に湿気を含ませて、反りを発生させる
同じサイズの無垢材を2枚用意し、それぞれ木表(下記、解説参照)と木裏に水分を与え旧水面側を裏にして日陰に放置し、反りの発生を観察しました。
実験に使用する材の大きさが、一般的な事務書類のA4サイズよりも狭い材なので、どの程度反りが発生するのか想定できません。厚みもやや厚手といわれる35mmあり、幅方向(※)が広めなので意外と反りが発生しやすいかも知れません。
※反りは幅方向に出やすい:一般的に、反りは薄く幅広の材に発生しやすいと言われています。
実験使用材:無垢材Black Cherry t35×300×190mm
実験時期2017年11月中旬 高松市郷東町
【解説】【木表(きおもて)】、【木裏(きうら)】とは、一本の樹木を製材する際、樹木の表面に近い方が木表といい、木裏とは、木の中心に近い方を木裏と呼ばれています。樹木の根からの吸水が樹皮近くを通ることから、木表側は、含水率が高いと言われています。反して、木裏側、つまり、樹木の中心側である木裏は含水率が低い傾向にあります。詳しくは、バックナンバーをご覧下さい。リペア4 ソリとの付合い方【ソリを科学する?】 https://shop.woodworks-marutoku.com/mokumoku/2017/11/2-1.html
【実験意図】
1.無塗装材は、含水率の変化が反りを発生させると言われているが、実際はどうか?
2.木表と、木裏では反りの度合いがことな異なると言われているが、実際はどうか?
【実験方法】
実験は、同サイズの無垢材2枚、目印に節のある方を「A」、節の無い方を「B」とし、Aは木表側に水分を与え、Bには木裏側に水分を与えました。このことで、木裏側と木表側での反りの差を確かめる。
1)A、Bの無垢材のそれぞれの面に直接道水を30秒かけました。
2)その後、1時間おきに都合3回、両方の無垢材に水を30秒間与えました。
実験は、日中はマルトクの工場裏空地と、夜間は工場内で11月中旬に3日間行いました。天候は、晴天の日に行いました。
(実験前)2枚重ねた様子。A,,Bの材の間には、隙間が無い。
------------------------------ 実験開始 ------------------------------
水分を与える(各材、片方の面のみ)
それぞれの無垢材に30秒間水道水をかけ、濡れたほうを下に向けて放置。
1時間後、2時間後、3時間後にそれぞれ30秒づつ同じ面に水をかけて、裏返しました。
水は、2回目より壁に立て掛けた状態でかけた。(裏面が濡れやすいので)
1時間後、僅かな反りを確認
1時間後、2枚を重ねるると、ごく僅か反りによる隙間が確認できました。
翌日、はっきりとした反りを確認
2日目、反り具合を見る為に、隙間が分かるようにAとB2枚合わすと2mmほどの隙間を確認できた。その後、1回だけそれぞれの片方の面に水道の放水により水分を与え、日陰に塗れた面を下にして日陰に置いた。夜間は、工場内にで写真の状態で保管した。
翌々日、明らかな反りを確認
3日目、反りによる隙間が4mm程になった。「反り」の発生は、隙間を見れば一目瞭然だ。
------------------------------実験終了------------------------------
反りのテストを終えて
木材に湿気を与えなくても、強い日射にさらすだけで、反りは容易に発生します。今回は湿気を与えて屋外に放置して試してみました。
天気の良い日に、適度な風のある状況下での実験は、とても分かりやすい結果がでました。
幅の狭い材を用いたので、分かりやすい反りがでるか心配でした。反りを喜ぶなんて、木材屋に身を置く者としてはご法度かも知れませんが、そこは実験という事でお許し願いたい。
反り予防には、ウレタン塗装や反り止め金具、幕板などの予防が安心
塗装は、必ず両面が基本です。幅広の天板なら反り止め金具(ご注文時に合わせて注文できます)をぜひお勧めします。もしくは、天板は、幕板を取付けるか、台座や、壁など可能な取付け場所に固定してできるだけ反りを抑える策を施して下さい。
今後、機会があれば「自然塗料塗装材 VS ウレタン塗装材 VS 無塗装材」、「広葉樹 VS 針葉樹」などの反り比較実験が出来ればと思っています。
2017年11月 2日
【ソリとの付合い方 その1・・ソリを科学する?】
魅力に満ちた天然木材の特徴・・呼吸する木
天然木材の魅力は、見た目の味わい深さだけでなく、木肌の優しい感触や、使い込むほどに馴染む質感、触れた際に響く深い音など、天然木材ならでは豊かさに満ちています。
しかし、水分含有率など適正規準で出荷された天然木材も、使用環境や経年で変化します。さらに塗装の有無によっては、含水率が変化しソリや、たわみ等を引き起こす要因となります。
こうした、天然木材を末長く気持ちよくお使い頂く為の方法や知識を今回よりシリーズでお伝えいたします。
木材のソリやたわみなどの原因は、いくつかの要因がありますが、その一つが木材内部の含水率の変化によるものです。
木材は、呼吸をしており内部の水分を放出と吸収を繰り返しています。それに伴って含水率が変化します。呼吸を止め、材の含水率を一定に保つ為に、全体を塗料皮膜(ウレタン塗装等)で覆うと木材内部の水分量が安定し、水分発生が抑えら、結果的にソリの抑制になります。
無塗装の場合や、片面のみの塗装(マルトクでの塗装は、すべて両面塗装です)の場合などは、非塗装面から木材の呼吸が生じ、木材の形状に変化が訪れます。
これら以外に形状変化する要因は、荷重や、日射など使用環境に起因するケースがあります。
ソリの発生
金属や、合成素材でも環境や条件によって変化しますが、木材は環境や条件にとても敏感です。
薄い天板に重いものを乗せると反りが発生したり。天板の一部だけに日射が続いたり、無塗装の天板に水をこぼすなどすると、ソリの原因となります。
ソリは天然木材につきもの
金属でも、熱や経年劣化で多少ゆがみが生じます。身近にある真っすぐなはずのステンレス定規でも、同じ定規を2本用意して目盛り部分を合わせると隙間ができる事があるなど、真っすぐに保つ事は、自然環境の中においては難しい事なのかもしれません。
金属に比べ木材はその特性から、薄い木材製棚板に荷重をかければ簡単にたわむように、ソリ発生の要因の一つに「厚さ」が大きな要素になります。
もちろん幅や長さ、取付け方法なども関係してきますが、ソリの出やすさには材毎の個体差もあります。
しかし、様々な対策で安心して使用できる方法がありますので、参考にして下さい。
ソリは木材の含水率の変化に影響を受ける
(ソリの科学)
木材のソリは、荷加重や負荷にも大きく起因しますが、木材内部の水分量の変化にとても影響を受けます。
一般的に木材は、原木の段階から様々な乾燥工程を経て規格に準じた水分含水量に整えられて市場に出荷されています。
さらに樹種や伐採時期、心材(中心部)と辺材でも含水率は異なり、規準(JAS等)に準じた商品のみ市場に出ています。
ご使用中、地域の気候や時期、使用環境により含水率も変化し、少なからず影響を受けます。
[参考]広葉樹:ウォールナット、オーク、タモ、ナラ、ポプラなど 針葉樹:杉、桧、赤松、栂など
【木材豆知識】 生材は、多量の水分を含んでいます。その水分の量は、樹種、木の周辺部(辺材)と中心(心材)、幹の位置、生育環 境、季節などによってかなり変化します。
出典:千代田工業株式会社 ホームページ「木の話」より引用 |
木材の特性
決して直線的な部分のない自然木を、直線で製材し放置すると、下図のようにソリが発生する性質があります。木表と木裏の含水率の差や、様々な要因で、ソリが発生します。
マルトクショップでは、反りにくい状態の材をお届けしています
木材の反りの発生は、含水率が20%〜30%の時に著しく発生します。マルトクでは、針葉樹は概ね15%、広葉樹は概ね12%の状態で材を出荷していますので、ご安心してお使い下さい。
乾燥中の無垢材
ソリ予防には、幅方向のソリ止め金具や塗装が有効
天板も、厚みがあればソリ抑制になります。更にウレタンの両面塗装を施す事で、ソリの予防に寄与しますが、最大の予防策は、天板の裏側に取付ける「ソリ止め」です。ソリの発生しやすい幅方向のソリを金具によって抑えるものです。
木材の特性から、幅方向に金属のL字型金具を固定する事で、物理的にソリを抑える事が出来ます。
天板の裏面に取付けられた「ソリ止め」金属製の金具が幅ゾリを防ぎます。
マルトクショップでもソリ止め加工を行っていますので、ソリが気になる方は木材購入時に一緒にお申し込み下さい。反り止め金具の取付け方によって可能な材の厚みが異なります。
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●マルトクショップ 「反り止め」
https://shop.woodworks-marutoku.com/images/tenban_sori.gif
(反り止め金具を取付ける場合、材厚が25㎜もしくは、厚さ30㎜以上必要です)
続編:「リペア5」 ソリとの付合い方・・「反りの発生実験」
https://shop.woodworks-marutoku.com/mokumoku/2017/11/-2.html
前号:「リペア3」自分で自然塗料を再塗装する
https://shop.woodworks-marutoku.com/mokumoku/2017/09/post-8.html