2019年6月20日
なにげなく安価な三段ボックスなどに逃げてしまいがちだけれど、棚は意外と作り込む要素がたくさんある家具。憧れの壁面収納だって、強度や重量に配慮しながら作ればDIYも可能です。今回はマルトク社内で行った、棚の設計と制作についてレポートをお届けします。
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DIYに取り組む際、一番初めに必要なのは完成形のイメージ。最近ではネットで画像検索をするとスタイリッシュで機能的な棚の画像が沢山出てきます。マルトクショップHPでも、木材を使った素敵な作品のページでお客様の作品をご紹介していますのでご参照ください。ひとくちに棚と言っても、そのバリエーションは様々。もちろん、DIYでの難易度も変わってきます。
一番手軽にDIYできるタイプの棚。
基本的には何らかの棚受け金具と棚板を組み合わせて制作します。2×4材を突っ張り棒のように設置して壁面収納を作る専用の器具も最近人気です。
メリットとデメリットの両側面を持つのが収納物が丸見えと言うこと。きちんとディスプレイすれば抜群にお洒落な印象になりますが、ごちゃついた物をとにかく収納したい人には向きません。また、強度が金具と棚板のみに依存するので、金具と樹種選びには慎重になる必要があります。
一般的に「棚」と言われて一番多くの人が思い浮かべるのがこのタイプの棚ではないでしょうか。
設計がシンプルで強度もあるのが特徴です。
側板があるので本のような不安定なものを収納するのにも向いています。ある意味王道と言えるでしょう。
シンプルな作りとはいえ板の勝ち方向や強度、制作工程も金具のみで取り付ける棚よりは考えることが多いですが、強度もあり使い勝手の良いタイプの棚です。
棚に蝶番を取り付け、扉をつけると戸棚になります。扉と棚のサイズをぴったり合わせなければならないので、DIYにはある程度技術が必要です。
戸棚の長所は何と言っても中身を隠せること。何を入れても閉めてしまえば部屋はスッキリです。また、扉を写真のように無垢材やフォトジェニックな素材で作ると一気にインテリアの主役になります。
棚は家具屋やホームセンターでも多く売られている家具。いくらでも安い商品は手に入ります。それにも関わらず、マルトクショップに送られてくるDIY写真はTOP3に入るほど多いです。
その理由として挙げられるのは、
・作りがシンプルなので、初心者でも挑戦しやすい
・好きなサイズで作ることができるので、ぴったりサイズで痒いところに手が届く
・オーダーするよりも安い価格で良い素材を使える
・何よりも、好きなデザインの棚が出来る!
といったところが多いでしょうか。なるべく簡単に作りたければ棚柱や専用金具を手配し、経費を安く抑えたければ樹種を工夫するなど、バランスを取りやすいのもDIYならではかもしれません。
今回作ったのは、普段マルトクショップの更新を行なっているシステム室の収納棚。年末の大掃除の際に別の場所から引っ越してきたのですが、全て会社中から集めたあり合わせの机や棚の中で働いていました。(あり合わせの天板や棚が会社中にいくつもあるのはマルトクあるあるかもしれません。)
立とうとすると椅子が後ろにぶつかる
決定的な欠点は、椅子の可動スペースの狭さ。この夏からスタッフが増えることもあり、きちんと業務スペースを確保しつつ、収納力もある棚を・・・ということで、システム室スタッフでDIYすることにしました。
手書きでも良いので図面を引こう
棚のように複数の資材が必要なDIYでは、簡単でも良いので必ず図面を起こしてみましょう。図を書いてサイズを計算することで、必要な材料と注意点が見えてきます。図面を引くのはCADが便利です。Jw_cadならインターネット上で無料でダウンロードできる上、ちょっと練習したらすぐ使えるようになるのでお勧めです。もちろん、きちんとサイズ計算さえできていれば手書きでも問題ありません。
今回は壁面に沿った背の高い棚を作ることにしました。収納物に本が多数あることから、形は側板のある箱型に。壁にピッタリつけるので、背板は無しで制作します。
棚を横からみたときに天板が側板に乗っている形を「横がち」、側板で隠れている形を「縦がち」と言います。一般的には天板が視線より下に来る場合は横がち、上に来る場合は縦がちが綺麗だと言われています。また、天板の上に何かを置くような使い方をする場合も、横がちの方が強度に優れるでしょう。
棚板の高さを自由に変更することのできる棚を可動棚と言い、市販の金具で簡単に作ることができます。いくつか種類がありますが、今回作った棚はダボレールという金具を使って可動棚をDIYしました。
見た目をスッキリさせたい場合は板自身にダボ穴を開けるという方法もありますが、等間隔に全ての板に穴を開けるのは高度な技。DIYで行う場合、初心者の方はプロに開けてもらった方が安心かもしれません。
また可動棚は便利な反面、棚の強度を補強することはできません。おおよそですが、高さが1m以上になってくる場合はどこかを固定棚にすることを検討した方が良いです。
帆立板とはいわゆる縦の「間仕切り」のことです。収納力を上げたいときには帆立板は欲しいところですが、あると組み立ての難易度が上がるのも事実。帆立板を固定して、いざ棚板を入れようとしたらずれてしまって入らない!なんてことはDIY初心者のあるある話です。
しかし、おおよそですが棚板の横幅が800mmより大きくなってくると、無いと棚板の重さにビスが負けてしまう可能性も(樹種や設計によりますので目安です)。帆立板は内側から棚板を支える役目も担います。
無いと簡単、あると安心だけど難易度の上がる帆立板。今回はシステム室の人間で組み立てなければならないという事情もあり(=工場スタッフと違って素人)、帆立板と側板の固定に簡単組み立て金物を採用しました。
この加工はマルトクショップでも別注で承っています。興味のある方はぜひお問い合わせください。(1ヶ所800円税込~)
設計を始める前に決めておいた方が良いのが樹種。樹種によって強度が異なるので、使用する板の厚さにも影響が出ます。棚は木材をたくさん使うので安くて扱い易いパインや杉で製作する方も多いですが、柔らかくて薄い木材は強度には優れないことがほとんど。薄い側板でスッキリとした印象に仕上げたいときは広葉樹がお勧めです。
樹種の硬度はこちらで確認できます。
→木材の性質および価格帯チャート
どの樹種であればどの程度の厚さが必要なのかは、図面をお送りいただければご相談も承っていますので、迷った際にはぜひご相談ください。そもそも図面が・・・というお客様には、有料で図面を作成することも出来ます。お気軽にお問い合わせください。
→お問い合わせフォーム
価格を抑えたいときには側板と天板に無垢材、棚板や帆立板には集成材、背板にはベニヤ・・・等、部位によって木材を使い分けるのがお勧めです。無垢材と集成材で樹種を合わせたり塗装の色を合わせるだけでも、驚くほど違和感ない出来上がりです。
目立たない部分を集成材で作れば違和感のない仕上がり
形・樹種を決め、サイズをきっちり測ったらいよいよ部材を手配します。今回DIYする棚の詳細は以下の通りです。
縦1620×幅1520×奥行き300mm。今回重視していたのは収納力を落とすことなく棚の前のスペースを広くすること。普段使用している収納用ダンボールを縦に収納しているので、横に並べられるように設計し直しました。奥行きを減らした分、縦の段数は増えています。
大きな棚なので強度が必要ですが、なるべく薄い板でスッキリ見せたいという希望だったので、安価かつ強度抜群のゴム集成材(20mm)を選択。ほんのりピンク色の色味も柔らかい雰囲気です。
先述の簡単組み立て金物は、金具を回転して固定するタイプを選択。帆立板のある棚の場合、きちんと所定の位置に板を取り付けるのは技術のいる仕事です。今回この加工を行うことで女性の力でも大型の棚を組み上げることができました。
【天板&底板】
20×300×1520mm×2枚(簡単組み立て金具:メス)
【側板&帆立板】
20×300×1580mm×2枚(簡単組み立て金具:オス)
【固定棚用棚板】
20×300×480mm×3枚
【可動棚用棚板】
20×300×470mm×9枚
【ダボレール】
ダボを穴に差し込むことで棚受けにすることができる
【金折】
固定棚を固定する。シンプルで安価。棚板1枚につき4枚使用
【ビス】
皿木ネジを使用。棚板の固定用は必ず板の厚みよりも短いものを選びましょう
【インパクトドライバー】
今回使うゴム集成材は硬いので、ドリルではなくインパクトドライバーを選択。
【ビット】
下穴用のドリル(2.5mm)、ネジしめ用のビット
【六角レンチ】
簡単組み立て金具用)
DIYは設計して計画を立て、資材を不足なく揃えることができれば50%出来上がったも同然です。今回の棚は女性二人で組み立てましたが、墨付けから始めて3時間程度で組み立てることができました。次回の更新では、組み立ての詳細をお伝えいたします。