2025年5月29日
木材を探すときに参考にすることは何ですか?多くの人はインテリアの観点から「色」「木目」、そして重要な「価格」、はたまた既存の家具と同じ樹種を。そんな項目を意識して木材を選ばれるのではないでしょうか。そうした項目と同じくらい大切な、特にDIYユーザーには重視して欲しいことがもうひとつあります。それは「木材の硬さ」。今回の更新では木材の硬さと、硬さによって変わる用途についてご紹介します。
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目次
– 硬い木材 – 軟らかい木材
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木材は生き物。当然数多くの種類があり、それぞれその比重は異なります。「硬い木材」を直訳したhardwoodという英単語は通常広葉樹を指し、その通り一般的に硬いとされる木材のほとんどは広葉樹です(軟らかい広葉樹もあります)。それに対し「軟らかい木材」=softwoodは英語圏で針葉樹のことを指し、実際に成長の早い針葉樹は広葉樹よりも軽く軟らかい木材が多いです。
木材の硬さは一般的に「気乾比重」で分かります。気乾比重とは木材を伐採し、乾燥させた後の重量を同じ体積の水と比較した際の重さのこと。一般的に軟らかいと言われる木材は乾燥させた際に細胞の隙間が多く、空気をたくさん含んでいるため重量も軽くなります。逆に硬い木材は細胞が密で、更に樹脂などの物質を多く含んでいるため重量も重くなります。
この比重は針葉樹で0.3〜0.5(水に対して3〜5割の重さ)のものが多く、広葉樹であれば0.5〜0.8に収まっているものがほとんどです。木材と言えば船やいかだの材料になる通り、水に浮く素材で知られていますが、世界には黒檀やイペ、ユソウボクなど比重が1よりも重い木材も存在しています。これらの木は比重が1より重いということは水よりも重いことから、木材でありながら水に沈むという、何とも不思議な特性を持っている素材です。
ウエンジはマルトクショップ でもトップの重厚な木材
硬い木材の一番の長所はやはり傷がつきにくいこと。日常的に触れる、作業することの多いテーブル天板やカウンター、フローリング材の第一選択としておすすめしたいのは、比重0.5以上の目の詰まった木材です。
また、硬い木材はそのほとんどが広葉樹であることから、種類の豊富さも魅力です。生物としての種類がそもそも少なく、比較的似た材質や木目になりがちな針葉樹とは異なり、圧倒的な種類の豊富差で地球上に繁栄している広葉樹は色も木目も質感も本当に様々。お家のデザインコンセプトにぴったりな木材を探すことができます。
「硬い、ツヤツヤ、丈夫」はハードウッド !
硬い木材のデメリットは、長所を裏返すことになりますが、硬くて重いからこその「扱いにくさ」にあります。一般的に比重が0.5を超えてくると釘などはなかなか入らなくなり、加工に電動工具は必須であることはもちろん、ダイニングテーブルの天板サイズになってくると成人男性でも一人で持ち上げるのは難しいほどの重量になります。
暖かい触り心地が何よりの魅力な針葉樹
比重0.3〜0.5程度の軟らかい木材は軽い分、組織にたくさん空気を含みます。その空気によって肌当たりは暖かく、触り心地が優しいのが軟らかい木材の特徴です。組織内に空気が含まれていることで断熱の効果にも優れているので、壁や天井などの羽目板に使うことでデザインだけでなく機能面でもメリットがあります。
軽い、軟らかい木材は基本的には針葉樹がメイン。生物としての種類が異なる針葉樹と広葉樹は成長速度にかなりの差があり、平均して針葉樹は広葉樹の約半分程度の期間(40〜60年)で建築資材として使用できる大木に成長します。インテリアのデザインを決める内装材として注目されることが多いのはオークやウォールナットなどの輸入広葉樹ですが、家屋の構造や柱など、「長い」「まっすぐ」「大きい」木材が必要な場面で選ばれるのは針葉樹です。サイズだけでなく木材自体が柔軟で、曲げる力や荷重に強いというメリットもあります。
軽くて暖かい針葉樹は壁や棚におすすめ
軟らかい木材のデメリットはやはり傷のつきやすさと強度です。触り心地が優しいことから天板や床材に針葉樹を取り入れる事例も多いですが、日常のちょっとした動作で金属などと擦れてしまうと簡単に傷がついてしまいます。これに関しての解決策は「気にしない」または「こまめなメンテナンス」の二択しかないです。また、空気を多く含む分伸縮幅も大きいので、フローリングや建具などに使用する場合には隙間ができやすいことを考慮して施工する必要があります。
マルトクの扱う木材の内、一番比重が重い木材は現状ウエンジで、気乾比重0.8前後となっています。アフリカの強烈な太陽を浴びて育つ広葉樹には、組織が密で重厚感のある樹種が豊富にあります。この比重0.8という数値はDIYや通常の家具等に使用される木材としてはトップクラスに重くて硬いと思っていただいて良いでしょう。
基本的には電動工具無しでは加工もできませんし、繊細な作業を要する彫刻などの用途には向かない木材です。後に続くメイプル、オーク、栗などはその硬さから内装材としてだけでなくスポーツ用品や電車の枕木など特殊な用途にも用いられてきました。このグループに分類されている木材は美しい上に傷がつきにくいので天板や床によく用いられる樹種が大半です。加工は大変ですが、お手入れすれば何十年と変わらぬ強度で使い続けることができるのが魅力となっています。
内装材として使用されている木材の内、種類が豊富なのは比重0.5〜0.65あたりの中程度の硬さの木材になります。中程度と表現していますが、前述の硬い木材グループが「特に硬い木材」で、こちらのグループがいわゆる一般的なハードウッドです。あまり木材に詳しくない方でも知っているような、有名な木材の名前もあるかと思います。
特に比重が0.6以上になるサペリ、ホワイトアッシュ、チーク、ウォールナットなどは研磨して仕上げた天板はすべすべとして、しっかり目の詰まった硬い感触です。加工も電動工具無しでは難しいでしょう。ビス留めなどの際にはきちんと下穴を開けて、丁寧に作業しないと割れなどのトラブルに繋がります。
アカシア集成材の比重は0.4〜6程度
全体としては高価格帯の木材が多いのがハードウッド の特徴ではありますが、ゴム集成材やアカシア集成材など、控えめな価格の木材もあります。近年人気のアカシアは成長が旺盛でCO2の削減に効果のある植物として、積極的に植林が進められている木材。天板に使える程度には硬く、濃い色の芯材と真っ白な白太のコントラストが個性的です。
比重が0.5未満の軽い木材は、軽く扱いやすいのが魅力。電源を使用せずに釘打ちや手でのサンディングで仕上げたい場合にはこちらのグループの木材がおすすめです。
日本で生産される木材の2トップであるスギ、ヒノキも比重としては0.3〜0.5で収まる軟らかい木材。流通量が多く価格も控えめであることが多いので、DIYから和風建築のリフォームまで、幅広く使用されています。スギとヒノキを比較すると、成長の遅いヒノキの方が目が詰まっており、若干硬いようです(比重0.4前後)。米栂やバスウッドは柾目の木材が取れやすく、木目が目立たない樹種なのでペンキなどで塗り潰すような塗装をする場合には仕上がりが良い木材となっています。
※※※ 木材は生き物。同じ樹種でも誤差はあります ※※※
近縁種の多い樹種代表、オーク三種 今回の記事では木材の種類によって硬さをランキングして比較しましたが、忘れずお伝えしたいのは比喩ではなく木材は生き物である、ということです。木材の世界ではままあることですが、同じ名前で販売されていても生物学的な名前は異なるというのはよくある話。近縁種が多い樹種では、生産国や販売している会社によって同じ名前でも微妙に種類が違う場合もあります。全く同じ品種の木材であっても生育環境や産地によっても目のつまり方が違ったり、一口に「オークの比重は0.7」と言えないのが木材の特性であり、面白いところでもあります。 その木がどんな材質なのか、詳細まで気になる場合にはできれば購入前にサンプル請求をしたり実際に見に行くことをおすすめします。プラスの言い方で言えば、本物の木材はこの世で一つとして同じものが無い完全なオリジナル製品。ぜひ個々の個性を楽しんでいただければと思います。
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床や天板にはハードウッド の出番
内装材としてのハードウッド の人気は高いですが、木材は不思議と硬くてしっかりしていれば何にでも対応できるという訳ではありません。100%オークで作った大型家具はきっと完成した時点で人の手では二度と動かせませんし、針葉樹と同じ処理で広葉樹の大きな棚板を取り付ければ壁の方が傷んでしまうでしょう。硬い木材はその分重くて触った時の質感も冷たかったりするので、裸で入る浴槽やお風呂のすのこにはやっぱりヒノキが適していたり、木材の重量に関しては「大は小を兼ねる」とはならないのが木工の奥深いところです。
硬い木材には硬い木材の、針葉樹には針葉樹の活躍の場があります。目的やデザインに応じて、ぜひじっくり木材を選んでみてください。サンプル請求やお問い合わせも随時受け付けておりますので、この記事と合わせてご利用いただければ幸いです。