2023年4月20日
無垢材・集成材を使う上で決して避けては通れない木材の「反り」。このもくもく通信でも反りに関する記事は複数配信して来ましたが、未だお問い合わせの非常に多いテーマとなっています。今回の更新では、木材の反りに関する基礎知識と、取り扱いについてご紹介したいと思います。
目次
– 木材とエアコン
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「木材とは反るものである」これは材木屋が声を大にしてお客様にお伝えしたいことでもあります。
実際にお客様からご購入後に反ってしまった、反りを防ぎたいというお問い合わせは非常に多いのですが、実際に反ってしまった方に使用状況をヒアリングさせていただくと決して「その使い方じゃ反るよね・・・。」という方ばかりでは無く、ある程度対策をされているのに反りが出てしまったという方も。そのくらい木材はデリケートな素材なので、反りを完全に防ぐことはプロでも困難ではありますが、反りを最小限にするためのサイズ選びやポイントがあります。
薄い木材はよほど小さくなければ反りやすいです
使用環境によってはどんなサイズのどんな樹種でも反るのですが、エアコンの直風や直射日光、高温多湿などの木材にとっての過酷な使用環境の場合をのぞいて、普通に使う上では下記のサイズくらいからが反りの対策を考えた方が良いサイズになります。
木材の厚さ | 反りが出やすくなる木材の幅(目安) |
---|---|
10mm | 〜100mm
10mm以下の場合はどんなサイズでも反る可能性があります。 |
15mm | 200mm〜 |
20〜30mm | 300mm〜 |
35〜40mm | 350mm〜 |
反りに関して言えば長さはあまり関係ないことがほとんどですが、木材を販売するなかで私たちが気をつけていることがあります。それは「幅≦長さ」であること。ここが逆転している場合、非常に反りが発生しやすくなります。ご注文の際にこの数値が逆転してしまっているお客様も時々いらっしゃるのですが、都度ご連絡して特殊な用途でない限りは数値修正の案内をしてから販売させていただいています。
お客様から時々いただく質問のひとつに、「反りにくい樹種はどれですか?」というお問い合わせがあります。これに対しての返答は「樹種は関係ありません」ということになります。正確には個体差、樹種による程度の違いは多少はあるのかもしれませんが、同じ樹種でも使う環境で全然動きが違いますし、どんな樹種も大なり小なり反りは出ます。
同じように、「無垢材と集成材なら集成材の方が反りにくいですか?」と言うお問い合わせも多くいただきますが、こちらもあまり関係無く、集成材でも反るときは反るので対策は必ず必要です。
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では木材はどのように使えば良いのでしょうか?反りを防ぐ(最小限にする)ためにできる対策はたくさんありますが、特に大切なのは以下の3点です。
ウレタン塗装の様子
木材の塗装には汚れを防いで見た目を美しくする以外に、木材の調湿の効果があります。無塗装材を仮にそのまま放置していると、付着した水や空気中の湿度をぐんぐん吸い込み、どんどん蒸発させてしまいます。その過程で反りやねじれと言った木材の動きが出てしまうのですが、塗装をするとその水分の出入りをゆるやかにして急激な変化を防いでくれる効果があります。
自然塗料での塗装とウレタン塗装で比較すれば、木材の呼吸を妨げない自然塗料よりは密封してしまうウレタン塗装の方が反りを防ぐ効果は若干強いように感じています。ただこれは販売とアフターフォローを繰り返すなかでの感覚値であって、エビデンスのあるものではないことをご了承ください。ただそんなウレタン塗装をしたとしても、極端に過酷な使用条件ではあまり意味がありません。エアコンの直風・直射日光・高温多湿の三つは木材の大敵ということは充分にご承知ください。
マルトクショップ の木材は基本的にDIYやリフォームなど販売後に何らかの加工をすることを前提に販売させていただいているので、ご利用の際には動きが出ないように両端を固定して使うことをおすすめします。テーブルであれば「ロ」の字のように反り留めの役割もしてくれる脚にビス留めする、棚板であれば側板に、壁付のカウンターであればきちんと壁に固定するなど、物理的に木材を固定してしまうことで大きな反りを防ぐことができます。
デザイン上両端を固定することが難しいようであれば、おすすめしたいのが反り止めです。反り止めとは木材の裏面に埋め込んで固定することで反りを防ぐ金物のことで、木材の厚さが25mm以上、幅は300mm以上、長さ500mm以上から取り付け可能です。取り付け本数は最低2本からで、取り付け位置に関してはご指定いただければ調整可能です。
反り止めの最小取り付けサイズ(木材のサイズ) | ||
厚さ | 幅 | 長さ |
25mm〜 | 300mm〜 | 500mm〜 |
30mm〜 | 300mm〜 | 500mm〜 |
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木材を使う環境でその後が変わります
木材を使い始める前の対策をしっかり出来たら、かなり木材の動きを抑制することは出来ますが、それと同じくらい大切なのは木材を使う環境です。先ほどから都度出している・エアコンの直風・直射日光・高温多湿の三つのうち一つでも当てはまれば、それは木材にとって過酷な環境ということになります。
特に日常生活のなかで当てはまりやすいのはエアコンの直風では無いでしょうか?「エアコンを使わないなんて無理!」という声が聞こえてきそうですが、エアコンはむしろ高温多湿を避ける意味でもあった方が良いです。問題なのはあくまでエアコンの「直風」で、木材の表面の水分をどんどん奪ってしまうので、あくまで直接の風が当たらないように配置に工夫するだけで大丈夫です。
また飲食店等で時々あるのが、日中の営業中はエアコンで温度が保たれ、調理や人の熱気で湿度が比較的高い状態なのに営業後はエアコンを切るので急激に冷えたり暑くなったりするパターン。こうした温度と湿度の急激な変化を繰り返すことも、反りやねじれの原因になります。
では木材の家具を一度手に入れたら、その後ずっと空調に気をつけて過ごさなければならないのか?というと、その答えはYESでありNOです。教科書通りの返答であれば、「木材はペットと同じ、湿度は60%前後で使ってください。」ということになります。でも不思議なことに、木材は加工して年数が経つとだんだんと大きく動くことは少なくなります。あくまで長年販売を続けてきた中での感覚ですが、環境が変わって最初の1〜2年、極端な温度や湿度の変化に気をつけて使うと、その場の環境に馴染んでそのまま使い続けられることが多いです。
水をつけて故意に反りを出させた無垢材
クレームに関してあまり大きな声で言及する販売店もあまり多く無いかもしれませんが、以前に販売した木材が大きく反った、割れてしまった等のクレームを頂戴するのは12月〜2月が多いです。
お客様のお話を拝聴して行くと、反ってしまった木材は6〜8月の高温多湿時期に販売した木材であることが多いです。原因として考えられるのは含水率の変化があります。マルトクショップ では木材を販売する際、含水率10%前後に調整して出荷していますが、梅雨〜真夏の高温多湿時期には輸送中や到着後に施工・DIYするまでの間の環境管理がされにくい数日間で簡単に14〜15%程度までし含水率が上昇してしまいます。
そうした時期に販売し、使用した木材が最初の半年程度で大きく反った、動いたとお問い合わせを頂くことが統計的に多くなっているので、特に暑い時期にご購入いただいた木材に関しては特に最初の一年は温度と湿度の管理に気を使うことをお勧めします。
ご購入後半年が経過してしまうと、ご連絡頂いても返品交換修正等の対応は難しくなってしまうのですが、状況によっては修正が可能な場合もございます。下記のページを参考にしたり、メンテナンスの相談でお問い合わせいただければ可能な限りご返信させていただきます。
今回の更新では木材の反りを具体的に防ぐための方法をご紹介しました。木材は工業製品とは異なり、天然の素材であるからこそどうしても反ってしまったり動いてしまったりと言った可能性は常にあるもの。でも、きちんとコントロールすれば大多数のそうしたトラブルは防げる物でもあります。
木材は世界中の森で何十年、何百年と育って、数々の人の手を渡ってやっとみなさんの手元へやって来ます。そんな命の恵でもある木材をすぐに痛めることなく何年何十年と快適にお使いいただくために、少しだけこうした知識を念頭に置いてお手入れして頂ければ、きっと木材は快適な暮らしのパートナーになってくれるはずです。
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