2024年9月27日
マルトクショップ の木材は普段企業様にも個人のお客様にも販売させていただいております。特に「木材を使った自慢の作品」をお送りいただく多くの方が個人のDIY愛好家のお客様。木材のDIYにはどうしてもある程度の電動工具が必要ですが、DIY初心者からセミプロの方まで、あると便利な木工用の電動工具を全3回の更新に分けてご紹介します。
前回の更新:
目次
– オススメ2:画期的な接合システム「ラメロ ゼータP2(P-システム)」 |
ラメロで加工した木材の接合の様子
木工やDIYを趣味にするにあたり、ハードルとなるのは電動工具を揃えることではないでしょうか。ひとつひとつ単価が安くはない上に、工具の用途が限定されるようなものも多いです。ただ、道具さえ揃えてしまえば極端に言えば家のリフォームだって出来てしまうのが電動工具の素晴らしいところ。本来職人の技術が不可欠だったような加工も、カバーできるような工具があったりします。
今回は正直趣味の範疇でここまで持っている人は少ない、けれどあったら家の内装まで作れるようなニッチな工具をご紹介します。
ルーターは木材の様々な切削が出来る工具です。面取りはもちろん、木材に穴を掘ってもう一方を嵌め込む「ホゾ(ホゾ穴)」と呼ばれる加工や溝など、様々な特殊なカットが可能です。
こうした加工はビット(先端の刃物)さえあればトリマーでも行うことができるのですが、トリマーとルーターの大きな違いはパワーと操作性です。ルーターは機械が小さい分操作性が良く気軽に使える反面、切削量の多い面取りや固い木材の加工には向かない場合も。その反面、ルーターは機体が重く扱いに力が必要ですが、その分パワーの必要な加工をガンガンこなすことができるので、ボーズ面のような切削量の多い面取りや厚みのあるハードウッドの加工を何枚も行いたい場合にはぜひおすすめしたい工具です。
操作方法
ビット(刃物)を取り付けます。コレットチャック(刃物を固定する部分)にビットを差し込み、スパナで固定します。しっかりと固定したら、今度は目盛りを使ってビットの出具合を調整します。刃の出方によって切削面の形も変わってくるので、慣れるまでは試し切り用の木片を用意していても良いかもしれません。
作業台に木材を固定します。片手で木材を抑えて他方の手で操作できるトリマーとは異なり、両手で操作するルーターは必ず木材をクランプ等で固定してから使う必要があります。
パワーのある機械なので、しっかり固定しましょう。
木材の固定ができたらカットを行います。写真はトップクラスのハードウッド であるオークの面取りを行なっていますが、トリマーでは加工できない大きなRの面取りもハードウッドの加工も、ルーターなら強力なパワーでスピーディに仕上げることができます。
スイスのラメロ社が開発したP-システムは、組み立て家具の製作に大きな影響を与えました。専用のジョイントカッター(ゼータP2)と治具で加工した木材に金物を差し込むだけで、簡単に木材同士を接合することができるようになります。加工は簡単なのに接合面の強度は高く、更に多くの接合方法と異なり六角レンチ1本で女性でも簡単に組立可能で、それだけではなく同じように簡単に解体することができます。
メリットの大きいラメロのP-システムは、現在マルトクの家具製造にも採用しています。専用のジョイント専用のジョイントカッター「ゼータP2」は個人で購入するには比較的高額ではありますが加工はシンプルで、ビスケットジョイント用のジョイントカッターとほぼ同じ手順で操作することができます。きちんとしたクオリティの家具を複数台製作したいような場合には強い味方になってくれるでしょう。
公式サイト:https://www.techno-tools.co.jp/lamello/psystem/
操作方法
加工位置を決めるために木材の厚みを測ります。厚さが分かれば目盛りを合わせて板の厚みの中心部分に刃物がくるように設定します。厚み方向だけでなく、ジョイントカッターの幅方向の中心位置も墨付けしておきましょう。
墨付けした中心に合わせて、両方の材の接合する面が向かい合うようにカッターで溝を掘ります。加工後の溝は一見ビスケットジョイントカッターで開けた溝に見えますが、よく見ると溝の底面が「T」の字になっているのが分かります。この溝に金具が引っかかることで、接着剤なしでもしっかりと木材を固定することができます。(接着剤と併用するタイプの金具もあります。)
ジョイントカッターで開けた溝の上に、専用の治具を使用して六角レンチを差し込む穴を開けます。マルトクでの家具製作ではこの工程はNCルーターで行なっていますが、専用の治具を使えば家庭用のインパクトドライバーで加工可能です。対になる二つの溝のうち、片側にだけこの加工は行います。
溝と穴の加工が済んだら金具を取り付けます。金物はオスとメスがあり、六角レンチ用の穴を開けた方の材にはオス金具を、穴が無い側にはメス金具を横から滑らせるように挿入します。
オス金具は六角レンチを入れて回すと固定のための突起が出てきてメス金具を掴む仕組みになっています。特殊な形の溝に挿入した金具同士が組み合わさることで、高度な手仕事や接着剤無しで頑丈に木材同士を接合することができるので、ラメロを使った家具は簡単に組立と解体を行うことができます。
ドミノジョイントカッターはドイツのフェスツール社が開発した、独自のジョイントシステム(木材の接合方法)のための加工用カッター。ドミノジョイントカッターのすごいところは、高度な技術なしで日本で言う「ほぞ組み」同等の加工ができることです。現在マルトクの工場では使用していませんが、ドミノジョイントはプロの木工所においても建具や家具の製作に使用されています。
ほぞ組とは2つの木材にそれぞれ凸と凹の加工をして差し込むことで木材を強固に接合する技術。強度が非常に高いですが加工には技術力と手間が必要で、思いついてすぐにDIYに取り入れられる加工ではありません。ドミノジョイントカッターなら、そのほぞ組同等の接合を墨付けとシンプルな操作で加工することができます。木材を組み合わせるためにはダボやビスケットなど他の手法もありますが、ドミノジョイントカッターと専用のドミノチップを使った加工はそのどちらよりも高い強度で木材を接合することができます。
▽ 公式動画
操作方法
ドミノジョイントカッターは基本的に専用のドミノチップを挿入するための溝を掘る機械です。溝の幅・深さ・角度・加工位置をそれぞれ別々に設定できるので、使用する箇所によって調整します。
木材の加工の様子です。前にぐっと力を加えて突き出すと、「回転しながら振り子運動する」刃物が出てくる仕組みです。この刃物の動きは特許を取得しているそうで、ドミノカッターをしっかりと押し込むことで一定の幅の溝を加工することができます。
木口に溝を加工した様子。穴が加工できたらビスケットジョイント同様ボンドを入れて、専用のドミノチップを挿入します。加工の種類によって、ドミノチップの大きさに対して溝の大きさに遊びが必要な場合(木材のハギ加工など)とそうでない場合(ほぞ組など)があるので、そうした穴の余裕も調整することができます。
ジョイントする木材の向かい合う部分両方に溝を掘ったら、雌となる穴を他方のドミノチップに合わせて、ボンドが乾くまで固定します。ドミノチップはサイズが6種類あり、一番小さなものは4×17×20mm、大きなもので10×24×50mmと大きく厚みがあるのが特徴です。ほぞ組としてだけでなくあらゆる木材のジョイントに使用できますが、どんな場合でもドミノジョイントの接合は小さな面積でも頑丈に仕上がります。
ルーターで加工したボーズ面加工
今回の更新でご紹介した工具は、どれもプロが使うような機能やパワーを持ったマシンばかりです。普段の細々としたDIYにはあまり必要ないかもしれませんが、ひとつひとつの器具を見ると意外と操作方法はシンプルで、持っていれば自宅のリフォームや大型家具作りだって夢ではありません。一度始めると意外と沼にはまってしまう木工DIY。ぜひ興味のある方は、電動工具もあわせてチェックしてみてくださいね。