2017年6月26日
ウレタン塗装材のメンテナンス
塗装被膜の存在も気づかないような自然な風合いのウレタン塗装(クリアーツヤ全消し)
ウレタン塗装材の日常の手入れは、固絞りの布で拭くだけ
使用環境や使用状況により大きく異なりますが、耐水、耐熱、耐傷、耐汚に優れているウレタン塗装は、比較的柔らかい樹脂による塗膜を形成していますので、自然塗料塗装に比べ撥水性に富み汚れも付着しにくい特性があります。ウレタン塗装の樹脂塗膜は、自然塗料塗装のように塗り直しなしで使用できる期間が一般的に長いといわれています。
経年劣化やヒビ、やかんの直置きなど熱による塗膜面の変色が発生した場合は、塗膜を剥がし再塗装をするが必要になります。しかし深い傷やヒビ、熱いものに注意して使用していただければ基本的には水拭きだけで長期間使える優れた塗装です。
汚れたときの掃除法
柔らかい布に希釈した中性洗剤を含ませ固く絞って払拭します。その後、ぬるま湯で固く絞った布で洗剤成分をふき取ります。最後に、乾拭きして水分を除きます。化学ぞうきんは、ウレタン塗装面に影響を与えますので使用しないでください。
アルコール、ベンジン、シンナー等の使用は、絶対避けてください。ウレタン被膜を溶解します。熱にも影響を受けますので、熱いやかんや鍋、湯呑みなどの直置きは避けてください。紫外線等にも樹脂膜が反応し日焼けしますので、ご注意下さい。
実際に天板等で使用した際には様々な汚れが付着することが考えられます。今回はウレタン塗装を施した無垢材の天板に、食品汚れと画材による汚れをつけて実際に綺麗にする実験を行いました。
汚れのジャンル | 汚れの素材 |
食品汚れ | コーヒー、中華調味料(豆板醤) |
画材汚れ | 油性ペン、色鉛筆、墨、水彩絵の具 |
実験要領:汚れを付着させてから1時間後に拭きとり、希釈した中性洗剤を布に含ませて払拭する。
実験材:ウレタンクリア―塗装(ツヤ全消し)無垢板
実験用具用材:中性洗剤(水で希釈したものを用意)、メリヤス生地、ティッシュ、消しゴム、(注1)ベンジン、エタノール、ウレタンスポンジ
実験は、マルトク工場内にて6月上旬から中旬にかけて常温で行いました。
中性洗剤だけで、一部を除いて汚れの大半は落とせます
ウレタン塗装は、樹脂被膜で覆われているので水溶性の汚れにはとても強いです。汚れをティッシュであらかた取り除き、希釈した中性洗剤で数回拭きとることで油性ペン以外の汚れは問題なく落とすことができます。
写真左:ウレタン塗装材に汚れをつけた 写真右:希釈した中性洗剤で汚れの半分(赤点線内)を払拭
油性ペンの汚れも、しばらく拭き続けると徐々に跡が薄くなりますが、完全には除去できません。試しに汚れ落としによく使用される消しゴムでこすって見ましたが、完全に落としきることは難しかったです。他の塗装でも同じですが、基本的に油性ペンは家具につかないように使うことをお勧めします。
写真右:ウレタン塗装面の油性ペン跡。写真右:希釈した中性洗剤で拭き取るも簡単には消えません
ウレタン塗装は、樹脂成分の塗装です。ベンジンやアルコール(エタノール)などの溶剤は化学変化の起因となりますので、絶対に使用しないでください。
今回は、実験という事もあり、あえてこれら溶剤を用いてみました。(お願い:真似はしないでください)
写真左上:ベンジンを用いても結果に変化はありません。写真中:アルコール(エタノール)でもほとんど変化なし。写真右:希釈した中性洗剤を含ませたウレタンスポンジで軽く擦ってみるとあっさり消えました。(実際には細かな傷がつきます)
使い込んだツヤ全消しのウレタン塗装材ならば禁じ手も?
どうしても油性ペンの汚れが落ちず気にななるようなら、条件付きですが、前述で使用を控えるように書いたウレタンスポンジを使う方法もあります。
条件は、年季の入ったウレタンツヤ全消し塗装であれば、希釈した中性洗剤を含ませた「ウレタンスポンジ(上写真右)」で、軽くこするとあっけなく油性ペンの汚れが落とせます。
ただし、目視では、よく分かりませんがウレタン塗装面に細かい傷が入ります。(光沢のあるウレタン塗装材には使用しない事)。ウレタンツヤ全消し塗装であっても、無傷の材には使用しないでください。塗膜が曇るばかりか、かえってその部分だけが目立ちます。
ウレタン塗装のお手入れは、基本水拭きだけ
表面が被膜で覆われているウレタン塗装は、水拭きだけで日常のお手入れは完了します。
しつこい汚れには、希釈した中性洗剤で払拭するだけで、かなり汚れが落とせ(というか、汚れにくい)ウレタン塗装のすばらしさを再認識しました。
衝撃と熱がウィークポイント
しかし、衝撃や熱で出来た被膜の変色や変質は、一旦塗装被膜を剥がさないと修復が出来ません。日常は、できるだけ丁寧に取り扱うことが求められます。
ウレタン塗装は、被膜が中の木材を保護していますので、被膜のみの傷なら木材内部に水分等の浸透が発生しないので、多少の傷は見過ごしても大丈夫ですが、木材に達する傷は早急な対応が必要です。
細かい傷であれば、ウレタン塗装用のタッチアップ(塗料)を筆で塗る方法もありますが、修復部位が目立ちますので技量が求められます。必要な場合は、塗料を扱っている店でご確認下さい。塗り直しは、DIYでは難しい作業ですのでプロにご相談ください。
(注1)ベンジン、エタノール、ウレタンスポンジ:これらの溶剤や研磨スポンジは、メンテナンスには相応しくありません。材を痛めますので使用しないで下さい。今回、実験を前提に使用してその有用性と無効性をお伝えするため特別に使用しました。あしからずご了承願います。