2019年8月20日
木材が私たちの手に渡り、実際に使われるまでにはかならずなにかしらの加工が行われています。
もくもく通信でも、これまで製材の過程や塗装について記事にしてきました。
→無垢材と集成材について
→マルトク的「塗装学」
木材を快適に、そして美しく、自分好みに、使いやすく・・・などなど、各目的に合わせたカスタマイズをするためにはなくてはならない様々な加工。しかし、どんな加工が実際に必要なのか、すぐに理解できる人は業者のお客さまくらいのものです。
そこで今回からのもくもく通信では、木材の加工について全四回にわたりお伝えします。
目次
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面取り加工とは、厚み部分を除いた”辺”の部分に対して施す加工です。料理の大根などにする面取りと同じなので、料理をされるかたはイメージがつきやすいかもしれません。
お店で買った無垢材・集成材の家具で、一見ただの四角い板にしか見えないパーツでも、目に触れる部分に関しては何かしらの面取り加工がされているのが一般的です。
前述の通り一見なんの飾り気もない四角い板のパーツでも、家具など完成品として販売されている木材には目立たなくても面取り加工がされていることがほとんどです。
ではなぜ面取り加工は必要なのか、その理由と面取り加工の役割をご紹介したいと思います。
木材をカットした直後の状態は、断面にはノコ目(カット時の刃物のあとや焦げ)が残り、角も鋭利な状態です。そのまま使用すると非常に危険で、触り方が悪いと怪我をすることも。
まず木端や木口を磨いてノコ目を落とし、肌当たりが良いように面取りして角を丸めることで、触れても痛くないように仕上げます。たった1mm(サンドペーパーで1往復程度)の面取りでも、あると無いとでは仕上がりに雲泥の差が出るのであなどれません。
面取り加工は天板等の装飾においても大きな役割を担っています。角を丸くする、斜めにカットする、段をつけるなど面取りの手法はさまざまで、やり方ひとつで見た目の印象が大きく変えることが可能です。
あくまでシンプルにスッキリした印象にしたいときは最低限の糸面加工(0.5~1mm程度角を落とすだけ)、個性や存在感を出したいときは装飾要素の強い面取り、というように、設置予定の部屋の内装に合わせて選択できるとより完成度の高い仕上がりになります。
完成品として販売されている木材にはほとんど加工されている面取りですが、施工の都合上あえて面取りをしないパターンもいくつかあります。特によくあるのは下記の2パターンです。
主にカウンターや棚板等に多いのが、このパターン。一辺を壁や背板・側板に密着させる、もしくは埋め込んで使用する場合にはその辺には面取りを行わないのが普通です。
むしろ、ピタッと隙間なく密着させるためには面取りはしないほうが仕上がりが美しくなるでしょう。
左記のように、木材を組み合わせてひとつの「面」にする場合。この場合も、面取りをしないほうが綺麗に仕上がります。面取りは角の部分を削ってしまうので、面取りした木材を接合すると面取りした部分だけ溝になってしまいます。
DIYをするときは、木材のサイズだけではなく、どこを接合するのか、面取りする部分としない部分まで織り込んで設計図をおこすとより完成度の仕上がりになるのでおすすめです。
面取り加工のバリエーションは非常に多く、マルトクショップでもすべての加工に対応できている訳ではありません。面取りのデザインによっては装飾的な意味合いが強くなったり、最低限の面取りでソリッドな質感を壊さないように仕上げることもできる奥の深い加工です。
これからご注文を検討されている方へ向けて、マルトクショップで加工できる面取り加工の種類を簡単にご紹介します。
なるべく面取り加工を目立たせたくない、自然な風合いで仕上げたい方におすすめです。
ちなみに”磨きのみ”は厳密には面取り加工ではありません。面取りの必要ない面や、DIYで面取りされる場合の下準備等にお選びいただく方が多いです。
”R”とは円の半径(radius)の略です。面取りに丸みを持たせると肌へのあたりも優しく、見た目も柔らかくまろい印象に。お子さんのいるご家庭には、ぜひおすすめしたい加工です。
≪バリエーション≫上3R+下糸面/上下3R面/上5R+下糸面/上下5R面/ゆるやかR面/ボーズ面
字の通り直線的で角張った面取りです。シャープで力強い印象に仕上げたいときに。
ななめカットや飾り掘りなど、装飾の要素が強い面取りです。合わせかたは難しいですが、特に天板に加工するとデザイン性のある華やかな仕上がりに。高級感を出したいときにもお勧めです。
≪バリエーション≫サジ面/ギンナン面/B面/C面/E面/M面
▼詳しく確認したい方はこちら
※塗装の前には必ず面取りを※
面取り加工は全面の磨きを行ったあと、角を取る加工です。表面を削ってしまうので、塗装をしたあとに加工をすることができません。また、磨いていない木材を塗装することも基本的には出来ないので、
1:全面の磨き
2:面取り加工
3:必要であれば四つ角の加工
は塗装の前に行いましょう。
面取り加工は主にサンドペーパーやトリマー、ルーターで加工することがほとんどです。マルトクで加工する場合は、特殊な案件をのぞいて大体は以下のような手順で加工されています。
面取りは工程の後半に行う加工です。面取りをしてからカットや磨きを行うことはできないため、必ず木材を加工予定のサイズにカットしてから面取り加工を行います。
木端・木口を専用の機械で磨いているところ。
本来であれば面取り加工とは別の加工ですが、断面がなめらかな状態でないと面取りができないため、マルトクショップで面取り加工をご注文いただく場合はこの木端・木口の磨き加工も併せて行います。価格も両方の加工を行う前提の価格です。
正寸カットと6面すべての磨きが完了したら、いよいよ面取り加工。糸面の場合はサンドペーパーで、糸面以外はトリマー、ハンドルーター、NCルーターで角を取って行きます。
一部、前垂れ角面やM面、E面など特殊な面取りに関しては、それ以外の技術も併用して仕上げてゆきます。
番外編:自宅での加工方法
面取り加工のうち、糸面加工に関しては比較的簡単にDIYすることができます。(上記ムービー0:56〜)
180番程度のサンドペーパーを不要な木片に巻き、力が均等になるように気をつけながら往復させます。均一に削るには経験が必要な作業ではありますが、一気に削り過ぎないように弱めに何往復かさせることで極端な失敗を防げます。
その他の面取りに関しても、専用のトリマーとビットを購入すれば自宅での加工が可能です。
お客様加工 |
ボーズ面 |
角面加工の応用 |
R面+コーナーR |
角面 |
R面 |
▼作品をもっと見たい方は
木材を使った自慢の作品
木材でのDIYを手がけない限り、おそらくほとんどの人が知らない面取り加工。それにも関わらず、面取り加工をしないことには木材は満足に使用することができないほど重要な加工でもあります。
糸面程度であればサンドペーパーで簡単に加工できる上、専用トリマーも安いものでは一万円前後で販売されているので日常的にDIYをするのであれば揃えてしまう方が安上がりかもしれません。
仕上がりの品質や手軽さを重視したい場合はプロにお任せいただければと思います。仕上がりイメージや用途別のおすすめなど、疑問に思った部分はぜひお問い合わせくださいね。